IATA、航空機のCO2排出量抑制を各国政府に要請

CO2排出量削減策の模索

今年のパリ国際航空ショーでお披露目された、エビエーション(本社・イスラエル)による電気飛行機、「アリス」。1回充電すれば、時速440キロで1000~1500キロを飛行することができる
© Matti Blume (CC BY-SA 4.0)

航空業界におけるCO2排出量削減には幾つかの策が試みられている。改良を加えた新型機の導入もその1つだ。米国ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の航空宇宙・防衛分野の専門家、フィリップ・プルヴィエ パリ最高経営責任者がAFPに語ったところによると、新たに開発された大型機は従来型よりCO2排出量が20~25%抑えられるという。しかし、航空機の価格は高く、耐用年数が長いため、航空会社が常に新型機に買い替え続けることは難しい。
また航空機用の電動化エンジンも開発が進められているが、商品化にこぎつけるのにはあと20年はかかると見られている。現状の製品はエンジンが大きい上に重量が重く、着陸時にその重さに耐えうる機体の開発は簡単ではないと、航空業界専門のPRエージェンシー、フランシス&ロー(本社・シンガポール)のリーサン・フランシス最高経営責任者はAFPに指摘している。

有望視されるバイオジェット燃料

SkyNRGプロジェクトに参画する3社の代表。左から、SHVエナジー(本社・オランダ北ホラント州)のブラム・グレーバー最高経営責任者、KLMオランダ航空のピーター・エルバース社長兼最高経営責任者、SkyNRGのマーテン・ファン・ディジック最高経営責任者
© 2019 KLM

フィリップ・プルヴィエ BCGパリ最高経営責任者、マイケル・ギルIATA航空環境部部長ともに、航空業界におけるCO2排出量削減の大きな鍵を握るのは、バイオジェット燃料だとしている。特に短期間のうちに削減を可能する点に期待がかかる。
直近では、KLMオランダ航空が、再生可能な航空燃料(SAF)の開発・製造を手がけるSkyNRG(本社・オランダ アムステルダム)などとの協力の下、オランダ国内にバイオジェット燃料の工場を建築中であることを発表した。2022年に完成予定の同工場はSAFを年10万トン生産する計画で、KLMオランダ航空は年間7万5,000トンを購入する。このSAFの利用で、化石燃料と比べ、CO2を少なくとも85%減らすことが可能だという。
現在バイオジェット燃料は、供給不足で高価格であることが問題になっている。マイケル・ギルIATA航空環境部部長は、今回のSkyNRGプロジェクトが突破口となり、普及が進むことを期待する。また約5年後には、こうしたバイオジェット燃料が総燃料供給量の2%を占めるようになるだろうという見通しを語っている。

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..