バイオマスの大規模利用という「誤謬」

里山資源を活用した小規模発電のメリット

専門家の間では、地域に根差した小規模発電を推進する声が多い。例えば、元日本環境学会会長で、自然エネルギー市民の会の和田武代表によると、里山資源を活用した小規模発電には、「輸送コストがかからず、燃料費を節減できる」、「小規模発電に最適な木質ガス化発電でコジェネレーション(熱電供給)が可能なため、エネルギー効率が高く、燃料消費も少ない」などのメリットがあるという。

さらに、「市町村規模で地域主体が取り組めば合意形成しやすく、スムーズに導入でき、林業や関連産業の活性化と雇用創出等による地域社会の自律的発展をもたらす」、「過疎化や高齢化からの脱却も可能である」、「里山と生態系等の地域環境の保全、災害防止にも貢献する」、「普及が促進される結果、CO2削減・地球温暖化防止に貢献する」などの効果もあるという(和田武, 2019「日本の木質バイオマス発電普及の現状と課題」『人間と環境』45(1))。

もちろん、小規模では大きな利益を見込みにくい。規模の大きい方が発電効率もよいし、建設コストも単位発電量あたりで考えれば小規模は割に合わない、と大企業ならば考えるに違いない。

しかし、日本の森林の現状を踏まえると、バイオマス発電は、地域の資源を活用した小規模発電(小規模熱電供給)が望ましいといえそうだ。

 

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環境にやさしい暮らしを考える

栗岡 理子(編集委員)

1980年代からごみ問題に関心をもち、活動しています。子育て一段落後、持続可能な暮らしを研究するため、大学院修士課程に進学。2018年3月博士課程修了(経済学)。専門は環境経済学です。執筆記事一覧

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