CNCにはカナダ、コスタリカ、コロンビア、デンマーク、エチオピア、フランス、ドイツなど19カ国が加盟していました。日本政府は9月24日、オーストリアやチリ、イタリアなど4カ国とともにCNCに加盟したのです(米国は未加入)。
これまで日本政府は、温室効果ガスの排出について「2030年26%減」「2050年80%減」としか表明していませんでした。しかし、今回のCNCへの加盟により、「2050年カーボン実質100%減」を国際公約したことになるのです。
企業も同様です。ここ数年のESG(環境・社会・ガバナンス)投資の流れに沿って、温室効果ガスの削減目標が問われるようになりました。ESGの世界でも「2050年カーボン実質ゼロ」目標は当たり前になりました。
日本ではリコー、富士通、コニカミノルタ、パナソニック、NEC、積水ハウス、ソニー、トヨタ自動車、日産自動車などの企業が「カーボン実質ゼロ」目標を掲げています。最近ではネスレが「カーボンゼロ」を表明しました。
「2050年カーボン実質ゼロでないと、投資家や株主にも評価されない時代になった」と言っても過言ではありません。
ここで大事なのは「野心的な」目標を掲げることです。「2050年カーボン実質ゼロ」といっても、完璧に道筋を付けた国も企業もまだありません。「目指す」ことが大事なのです。
「バックキャスティング」思考が重要
日本では、伝統的に「できる事からコツコツと」が美徳であり、それ自体は悪いことではありません。「できもしない目標を発表するのは無責任だ」という気持ちもあるでしょう。
ただ、世界で必要とされているのは、カーボン排出をゼロにするという野心的な長期目標を掲げ、2050年という目標年から遡って「ロードマップ」を決めていく「バックキャスティング」思考です。
(「オルタナ本誌.15号(2009年9月)第一特集『バックキャスト経営』を考える――企業のCO2削減はなぜ長期目標が必要か」ご参照)。
国連演説でグレタさんは「今後10年間で(温室効果ガスの)排出量を半分にしようという、一般的な考え方があります。しかし、それによって世界の気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は50%しかありません」と述べました。