7年目を迎えた伊藤忠建材のブナの森づくり

地球樹の森に掘り採った稚樹を運び、移植する(長野県 木島平村)

何故、企業が森づくりを行うのか
伊藤忠建材の森づくり活動が、長期間にわたって継続しているのにはいくつかの理由がある。一つは、森づくりを通じて環境保全に貢献したいという社内の強い意思があること。植樹したばかりの若い森は優秀な二酸化炭素吸収源となり、ゆくゆくは水源涵養、生物多様性の確保などに役立つ。

また、社員が毎年、木島平村を訪れることで地域活性化にも貢献できる。さらに、社内的な観点からすると、森づくり活動に参加することで他部署間、多世代間での交流が円滑になる。社内では会話をする機会が少ない若手社員と幹部社員も、森づくりの現場では同じ立場で気軽に話すことができる。

同じ作業で汗をかき、同じ釜の飯を食った仲間といえないこともない。若手社員にとって、雲の上的な存在だった重役も、廊下ですれちがったときに「どうも」と気軽に会釈できる関係になる。

また、新入社員にとっては、地球樹プロジェクトの理念の体験・理解だけでなく、同期社員との親交を温める場として役立っている。伊藤忠建材では7月または9月に植樹活動を行っているが、4月に入社し研修を終え各所属部署に配属され数か月後に1泊二日の植樹活動で顔を合わせることで、配属先での悩みを共有することもできる。

ちょっとしたことだが自然に囲まれた環境で身体を動かし、語り合えることは心身のバランスにとてもいい影響を与えていると感じる。森林の持つセラピー効果なども大きく影響しているのだろう。

森林で汗をかくと、自然と連帯感が生まれる(長野県 木島平村)

地球樹の森づくりの意義と成果
伊藤忠建材は、森づくり活動を社外的にはCSR活動の一つとして、社内的には地球樹という社内理念の浸透と効果的な新入社員研修として活用しているといえる。就職活動の場でも、この森づくり活動は学生たちからの受けがいいという。企業の森づくり活動というとCSR的な意味合いが強いが、実は社員の心身の健康管理や社内融和にとても役立っている。森づくりは、とても時間がかかる作業だ。

とくにブナはスギやヒノキに比べ生長がゆっくりだ。植栽地が森に見えて来るのは、まだしばらく先の事だが、継続は力と考え長く続けていってほしいと思う。

フリーランスのコピーライター。「緑の雇用担い手対策事業」の広報宣伝活動に携わり、広報誌Midori Pressを編集。全国の林業地を巡り、森で働く人を取材するうちに森林や林業に関心を抱き、2009年よりNPO法人 森のライフスタイル研究所の活動に2018年3月まで参画。森づくりツアーやツリークライミング体験会等の企画運営を担当。森林、林業と都会に住む若者の窓口づくりを行ってきた。TCJベーシッククライマー。

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キーワード: #CSR

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