原田勝広の視点焦点:「妊婦さん、私が席を譲ります」

妊婦さんが電車に乗って体がつらくて座りたいとか助けてほしいと思った時、持っているマタニティマークのついた丸い小さな発信機を「ON」にすると半径2㍍以内のサポーター(助けたいという意思のある人があらかじめサポーター登録しておく)のスマホの画面に「妊婦さんが近くにいます。席を譲りましょう」という通知が届きます。

「ゆずる」ボタンを押して返すと妊婦さんの発信機が赤く点滅して知らせるという仕組みです。

困っている人と、手助けしようという人をつなぐオシャレな仕掛けですね。人のやさしさ、つまり善を引き出してくれる心温まるお話だと思います。

その気はあってもスマホに夢中で気が付かなかったということもなくなるわけですが、新製品の開発にはPLAYERSの主宰者であるタキザワさん自身のにがい経験が生かされているのです。

タキザワさんは1人目の男の子が生まれる時、奥さんが切迫流産の怖れがあり埼玉県の自宅から東京都内の病院へ向かうのに付き添いましたが、帰りの電車で夕方のラッシュに引っかかってしまいました。

奥さんの体が心配で何とか座らせたいと思うのですが、電車を何台かやり過ごし前列に並ぶなどの工夫をしても席が取れません。

誰も席を譲ってくれず困り果てている時、たまたまマタニティマークに気づいた男性がさっと席をかわってくれました。

「妻とお腹の赤ん坊と2人分助けられたと感謝したが、自分自身が普段マークに無関心だったことを反省した」とタキザワさん。

2人目の女の子が生まれた時、「この子が大人になった時、妊婦に席を譲る人が少ない社会であってほしくない。日本を変えたい」と思ったのです。

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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