絶滅危惧種の自生地も爆破

「石灰石は日本で100%自給している鉱物」「世界中にほぼ無尽蔵に存在」などといわれると、石灰石ならば安心して使えそうな気がする。しかし、実際の採掘現場は自然破壊に直結しているのが現状だ。

「LIMEXの原料である石灰石は東北地方で採取している」(TBMコーポレート・コミュニケーション本部の菊田譲コミュニケーション・ディレクター担当)という。

石灰石鉱業協会のウェブサイトによると、日本では現在約250の石灰石鉱山が稼動している。

生産量を県別に見ると、大分県が最も多く全国生産量の19%を占めており、2位以下は山口県(11%)、高知県(11%)、福岡県(10%)と続く(資源エネルギー庁鉱業課資料)。

「採掘方法としてはほとんどの鉱山で露天採掘での『ベンチカット採掘法』が採用されています。ベンチカット採掘法はまず、穿孔機で発破孔を穿孔し、発破によって岩盤を起砕します。発破により起砕された石灰石は、ホイールローダや油圧ショベルによってダンプトラックに積みこまれ立坑まで運搬されます」

日本消費者連盟の大野和興共同代表は20年前から埼玉県秩父地方で毎日武甲山を眺めながら暮らす。大野代表は、「この20年だけを見ても武甲山の変貌はすさまじい」と語る。

秩父郡横瀬町から望む武甲山(提供:大野和興代表)

「石灰の残量は少なくなったといわれながら、採掘は続いており、頂上も次第に低くなっています。1336メートルあった標高は現在、1304メートルになりました。石灰岩特有の希少な植生があるのですが、絶滅危惧植物『チチブイワザクラ』や『武甲ミヤマスカシユリ』の自生地は今も爆破され続けています」

大野代表は次のようにも話した。「その一方で、採掘を続けている鉱業会社の労働組合や市民ボランティアによる植林も少しずつですが行われています。しかし、破壊に追いつかず、近年はせっかく育った苗木が鹿に食べられてしまうということもあって、緑の再生は程遠い状況にあります」。

武甲山は、北側斜面が良質な石灰岩であるため大正時代から採掘が進んだ山だ。特に山の形が変わるほど採掘量が増えたのは1970年代以降だといわれている。高度経済成長により、セメントの需要が急増したためだと思われる。

■破壊が進む神の山、石灰石を使うということ

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