■【2】各国の温室効果ガス排出削減目標の引き上げ
2つ目のハイライトは、今回のCOP25の一番の焦点である、各国の削減目標を引き上げる機運が醸成されるかどうかでした。
COPでは、この削減目標の引き上げを含む取り組みの強化を、しばしば「野心(ambition)の強化」と呼びます。パリ協定の「ルールブック」の最後の詰めを行なうことはもちろん大事ではありますが、同時に、各国に対策の強化を促すものとならなければなりません。
先進国・途上国の枠を超えてすべての国が参加する画期的なパリ協定ですが、削減目標を含む国別目標(NDC)はそれぞれの国が国内で決めたものを国連に提出する仕組みとなっています。
しかし結果として各国がパリ協定に現状で提出している削減目標は、すべて足し合わせても、気温上昇を1.5℃はおろか、2度未満にさえ抑えることのできないレベルにとどまっています。
削減目標は2020年の2月までに、各国が再提出することが決まっているため、その際に、「強化」して持って来ることを、今回のCOPが決定として呼びかけることができるかどうかが焦点でした。
【2】(1)グレタ・トゥーンベリさんの到着と気候マーチ

世界各地で異常気象が観測された2019年は、気候「危機」や気候「非常事態」という言葉が頻繁に使われるようになり、それを受けて、若者世代が世界各地で声を挙げ始め、学校ストライキやマーチ(行進)を行なった一年でした。そして、「未来のための金曜日」と呼ばれるその運動の中心にいたのは、スウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリさんでした。
トゥーンベリさんは、第1週目の金曜日、12月6日にCOP会場に到着しました。前回のCOP24にもトゥーンベリさんは来ていましたが、その当時とは比較にならないほどの大きな注目を集め、彼女の行く先々で大量の人だかりができる事態となりました。
同日には、マドリード市内で気候マーチが開催され、主催者発表で50万人とも言われる多くの市民やNGOが、気候変動対策を訴える行進に参加。WWFのメンバーも、「今しかない!」と対策を訴えるバナーをかかげ、サポーターやボランティアの方々と共に行進に加わりました。
トゥーンベリさんも、マーチの参加者に向かってスピーチを行ない、世界の指導者たちや政策決定者への行動を訴えました。
その他にもアフリカ・ウガンダの少女など世界中から多くの若者たちがCOP25に参加し、「若者COP」と言えるほど、若者たちが会場で活発に「野心(削減目標などの温暖化対策)の強化」を訴えました。
「今は私たちの世代は20%に過ぎないけど2050年には80%になる。私たちの将来を壊さないで」と訴える若者の声が、会議をしている政府交渉官の部屋まで届き、会場中に響き渡っていました。
【2】(2)石炭に固執する日本の姿勢に批判が集まる