法務省の「第5次出入国管理基本計画(2015年)」には、この制度によって保護する対象を明確にし、透明性を向上させることで、難民の適正かつ迅速な庇護を推進すると書かれていますが、未だに前述の通りの水準です。
命に関わる重大な審査の問題点が認識されながら、改善されない状況が長年続いています。難民支援協会を含め、弁護士や研究者もこれらの問題を指摘し続けていますが、大きな改善は見られていません。
さらに、法務省は現在「収容・送還に関する専門部会」において、在留資格を持たない人の送還を円滑に進めるため、送還に抵抗する人(送還忌避者)に罰則をもうけたり、難民申請中の人も送還できるようになる法改正を検討しています。
保護すべき難民を確実に保護できていない現状を省みることなく、このような法改正が行われれば、難民を迫害の待ち受ける国へ送り返してしまう危険性がこれまで以上に高まります。
入管庁が適切な難民認定に向けた取り組みを進めるよう、いま以上に働きかけ、難民保護を目的とする制度を根幹から揺るがす法改正を防ぐには、多くの方に関心を持っていただくことが重要な後押しになります。今春にも報告がまとめられる予定の「収容・送還に関する専門部会」の動向を含め、引き続き、注視いただければ幸いです。
日本にも、内戦が9年続くシリアのみならず、40万人以上が避難を余儀なくされているカメルーンの最も危険な地域や、コンゴ民主共和国の極めて深刻な状況が続く地域など多くの国から、保護を求めてたどりつく人がいます。難民支援協会は、入管庁への働きかけをはじめ、そうした人たちを守るための様々な活動を今後もあきらめずに続けていきます。