■著名人が移民・難民向けに16言語で啓発

一方で、言語理解が不自由な人々といえば、欧州では、近年増大する世界中からの移民・難民たちも似通っている。

移民と庇護申請者の社会的プラットフォーム研究プログラムRESOMAのコンテさんによれば、「多言語支援は、スウェーデン他、いくつかの国ではとても充実しているが、他の国々ではNGOによる個別努力が散見されるレベル」とのこと。

EUは、各国の努力をつなげて好事例から学ぶためのハブサイトを提供している。難民キャンプでの集団感染も伝えられる中、絵や写真を多用したツールも活用できるのではと筆者は思う。

なかでも、移民出自の若いジャーナリスト、キノさんがスウェーデンで展開するtellcornaは優れものだ。それぞれの言語・出身背景から影響力ある著名なスポーツ選手や歌手、役者、モデルなどを選び、彼らに16言語で語らせている。異なる背景を持つ移民層は、自身に背景の近いインフルエンサーに注目しているのだという。

医療において、障がいや困難のある人を、差別しないためのガイドラインは、世界のあちこちで明文化され始めている。

医療行為を施す際、適切性や公平性ではなく、目の前にいる患者の年齢や性別、社会的地位、障がいの有無などに左右されてしまえば、命の価値の値踏みに他ならないからだ。

だが、新型コロナ危機に直面し、飽和寸前のひっ迫した現場には、医療資源が絶対的に不足している。人工呼吸器が後1人分しかないその場に、運ばれてきたのが、30代の健常な若者と、心臓疾患を持つ高齢者と、重度自閉症者と、自分の名前も名乗れないホームレスだったら、誰に生きるチャンスを与えるのか。今、欧州は、世界は、こうした厳しい局面に立たされている。正解は誰にも分からない。

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