飛騨高山の価値創造千年物語(中畑 陽一)

伝説の怪物「両面宿儺(りょうめんすくな)」

こうした飛騨の匠に関する資料は、地元高山の図書館を探してもそれほど多くは残っていません。飛騨地方は中央政府からすれば当時はある意味未開の地であり、今で言うと開発途上国でした。その位置づけがよくわかるエピソードがあります。

日本書紀に「両面宿儺(りょうめんすくな)」という飛騨の悪人の一説がありますが、これは飛騨地方に顔が2つある略奪者がいたという勧善懲悪ストーリーです。

しかし、実は地元民からはこの両面宿儺は都による匠たちの強制連行を阻止しようとした英雄として称えられていたというのです。歴史は勝者が創ります。米大陸を発見したコロンブスから見たインディアン、これが飛騨の民であり両面宿儺でした。

その両面宿儺がいつしかかぼちゃになったわけではありませんが、今では「宿儺かぼちゃ」という名前に名残をとどめています。ストーリーの中に真実があるのか、都合よく塗り替えられているのか、ステークホルダーの声に耳を傾けることで、定義づけが変わってくる歴史的な事例かもしれません。

その複雑な歴史の味わいは、宿儺かぼちゃを食べるとわかるかもしれません。ぜひともご賞味ください。

次回は、高山らしさが開花し、現在の高山の礎が築かれた江戸時代をお伝えしたいと思います。

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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