モーリシャス原油流出事故で日本に危機感はあるのか

エクソン社の「3つの失敗」とは

ところで三井商船の「わかしお」号からの流出原油は1000トンとされる。これを重油の比重(0.9)で計算すると、111万キロリットルだ。「ナホトカ」や「バルディーズ」よりは少ないが、ラムサール条約の指定地域という点が気になる。

日本のメディアは、今回のモーリシャス「わかしお号」事故への関心があまり高くないように映る。商船三井も重い社会的責任を背負った割には、動きが鈍いように思える。

ブログ「エクソン社の3つの失敗」によると、次の3つのポイントが重要になる。

(ここから引用)
「第一の失敗は、事故後すぐに責任のある経営層が現地に赴かなかったことです。 経営層が事故処理に送り込んだのは地位の低い役員であり、最高責任者であったRawl会長が現地を訪れたのは22日後でした。

第二に、事故後、多くのメディアが現地に乗り込んだにもかかわらず、エクソン社は 「会社の方針についての取材は本社のあるヒューストンとニューヨークのみで対応する」と決め、しかも情報を積極的に提供しようとしませんでした。

第三に、エクソン社の最高責任者がオイル漏れ事故が起きてからほぼ一週間というものコメントをしませんでした。 一方、会社の作成した一般向けの情報とは異なる情報が石油業界の別ルートから流されました。 オイル漏れ事故に関する全国紙への謝罪広告は事故から10日も経ってから行われ、しかもその中でエクソン社は事故の責任を認めませんでした」
(引用終わり)

エクソンは「バルディーズ」事故で25億ドルもの懲罰的損害賠償を負わされた。商船三井も、事故の対応を誤れば、損害賠償だけでなく、投融資の引き上げや株主代表訴訟の可能性も否定できなくなる。

ちなみに商船三井グループのホームページにはサステナビリティのコーナーがある。

そこでは(重大海難事故・油濁による海洋汚染・労災死亡事故・重大貨物事故のゼロ)など「4ゼロ」がうたわれている。

しかし、2013年に同社運航のコンテナ船「MOLコンフォート」が座礁し、船体が真っ二つになって漂流した事故のことは1行も書かれていない。セリーズ原則で言うと、今回の事故は、7)8)9)10)辺りの対応が気になるところだ。

そもそも、海難事故による大量の原油流出は世界では数年に1度の頻度で起きている。商船三井の事故も含めて、原油流出による生態系や観光資源の棄損は由々しき問題である。

上記の「エクソンの失敗」にもあるように、社長ら責任ある経営陣が直接、現地に行って、謝罪や陣頭指揮を取らなければ、世界の批判の矛先は、商船三井だけでなく、わが国そのものに向けられる可能性すらある。

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