――宇宙開発が進むにつれて、スペースデブリと呼ばれる宇宙ゴミも増え続けています。気候変動問題における先進国と開発途上国のように、置かれた環境によって、主張が分かれますが、私たちはどのように向き合えば良いのでしょうか。

使い終わった人工衛星などがゴミとなって漂い、それらが衝突することで、さらに散らばって、宇宙ゴミが加速度的に増えていきます。

10センチメートルより大きな宇宙ゴミで、地上から観測できるものだけでも2万個、それよりもっと小さいもので何十万個。1ミリメートルより小さいものだと何億個ものゴミが存在しているとされています。

秒速8キロメートルほどのスピードで地球の周りをグルグル回っており、ピストルの玉の10倍くらいの破壊力があるため、小さくても大変危険です。

衛星の打ち上げニーズが増えている一方で、宇宙ゴミの影響で打ち上げができなくなるかもしれないという懸念があります。

先進国からすると、みんなが影響を受けるからみんなで解決しようというスタンスですが、途上国からするとゴミを出した先進国へ負担を求めるという状況で、意見が食い違ってしまうことが多いのです。まさに温室効果ガスの排出と同じ構図です。

国連でも何度も議論があり、使い古した人工衛星は、大気圏に落として燃え尽きるようにするか、より軌道を上げて地球から離すことで危険回避をしようといったガイドラインはできていますが、拘束力はありません。あくまでも、努力義務でしかないのです。

このような状況に対して、むしろ民間企業が国よりも早く動くことができると考え、この問題解決に取り組み始めた企業が登場しています。例えば、日本の「アストロスケール」はスタートアップで、この宇宙ゴミ回収をビジネス化した例です。

彼らのサービスは、高速道路でのトラブル発生時に、道路交通サービスのJAF(日本)やAAA(米国)が活動を行うイメージに近く、人工衛星にとって人気の軌道上で起きたトラブルを、民間企業が対応するというものです。

どうしても避けられない人工衛星のトラブルに対応するために、保険の様な形でサービスを提供する仕組みを、日本がイニシアチブを取って行なっているのはすごいことだと思います。地球も私たちも宇宙の一部。持続可能性を考えていく際には、私たち一人一人が「宇宙船地球号」の乗組員だということを忘れないことが大切だと、改めて実感します。

◆山崎直子(やまざき・なおこ)
千葉県松戸市生まれ。1999年国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士候補者に選ばれ、2001年認定。2004年ソユーズ宇宙船運航技術者、2006年スペースシャトル搭乗運用技術者の資格を取得。2010年4月、スペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗、国際宇宙ステーション(ISS)組立補給ミッションSTS-131に従事した。2011年8月JAXA退職。内閣府宇宙政策委員会委員、一般社団法人スペースポートジャパン代表理事、日本宇宙少年団(YAC)アドバイザー、女子美術大学客員教授、日本ロケット協会理事・「宙女」委員長、宙ツーリズム推進協議会理事、2025年日本国際博覧会(万博)協会シニアアドバイザー、ロボット国際競技大会(World Robot Summit)実行委員会諮問会議委員、特定非営利活動法人ロボットビジネス支援機構(RobiZy)アンバサダー、環境問題解決のための「アースショット賞」評議員などを務める。著書に「宇宙に行ったらこうだった!」(リピックブック社 2020年11月出版)、「宇宙飛行士になる勉強法」(中央公論新社)、「夢をつなぐ」(角川書店)、「瑠璃色の星」(世界文化社)など。

(取材を終えて)
「宇宙が憧れの場所だったが、宇宙に出てみると、青く輝く地球がとっても美しく、地球の方が特別・憧れの場所だったと180度考え方が変わった」と話していた山崎さん。何気ない自然環境へのありがたみを痛感し、「当たり前が決して当たり前でない」と思う様になったと話す。その思いこそ、地球が気候面で直面している課題への深刻さを認識するきっかけになっているに違いない。「宇宙技術がインフラの一部」と語る山崎さんは、気候変動問題についても、問題解決の糸口になる可能性を秘めた宇宙技術を共有してくれた。我々の生活の中で、宇宙を身近で感じる機会はなかなかないが、インタビューを通じて、宇宙を意識することで改めて地球という存在を尊ぶことができるように感じた。極限状態の宇宙を意識した技術が、今後さらに地球環境問題に対処するきっかけになるかもしれない。

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