コロナ禍が示す形式基準の限界

しかるに、「密集だけを避けて密閉や密接を気にしない」といった、ポイントのずれた対応は一向になくならない。多くの個人や法人にとって、現実に感染を防ぐことではなく、周囲に「やってます」という姿勢を見せることの方が目的になってしまっているからではないか。

CSRの世界には基準やルールが多い。必要があってのことだが、形式基準を守ることがCSRだと開き直ってしまうと、実が無くなるばかりか害悪にさえもなりかねない。

CSRは、「あれをやっていないのでマイナス1点、これもやっていないのでマイナス2点」といった減点主義に堕すべきではなく、「これをやったので世の中にプラス1点、あれもやればプラス2点」という加点主義で取り組むべきなのだ。やること自体が、企業と世間にプラスなのだから。

本質を常に検証し行動を調整することの重要さを、コロナ禍は我々に学ばせてくれているのではないか。

motanikosuke

藻谷 浩介(日本総合研究所主席研究員/オルタナ客員論説委員)

山口県生まれの56歳。平成合併前の全3,200市町村、海外114ヶ国を自費で訪問し,地域特性を多面的に把握。地域振興、人口成熟問題、観光振興などに関し研究・著作・講演を行う。2012年より現職。著書に『デフレの正体』、『里山資本主義』 (KADOKAWA)、完本・しなやかな日本列島のつくりかた(新潮社)など。近著に『進化する里山資本主義』(Japan Times)、『世界まちかど地政学 Next』(文藝春秋)。 写真:青木優佳【連載】藻谷浩介の『ファクト』で考えよう

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キーワード: #CSR#新型コロナ

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