コロナ禍が示す形式基準の限界

【連載】藻谷浩介の『ファクトで考えよう』(1)

新型コロナウイルス感染症の、再々拡大が止まらない。ただし未成年の死者はまだゼロであり、20~40代の死者もごく僅かだ。重症化するのも亡くなるのも圧倒的に70代以上なのだが、残念ながら高齢者への家庭内感染が相次いでいる。居酒屋などで感染してきた無症状の若い世代から、同居の高齢者が感染して重症化してしまうのだ。それを防げていないということは、どうもつまり、各人の用心の方向がずれているのではないか。(藻谷 浩介=オルタナ客員論説委員)

たとえば誰でも機械的に覚えている「三密」という言葉。だがその中身は「密集、密閉、密接の3つの密が重なること」だと、すらすら答えられる人はいるのだろうか。「密閉」と「密接」が何を意味するのかを、認識できている人はさらに少なそうだ。

最初から「三密」などと「覚えやすいが意味不明」な掛け言葉にはせず、「他人同士集まって、換気不全の屋内で、マスクなしでの長時間の会話をすること」は避けましょうと明言すべきだった。

手洗いを行う限り、ウイルスの感染経路は「飛沫やエアロゾルを介して口から口へ」に限られる。そして換気不全の屋内で、マスクなしでの長時間の会話を行わない限り、そのような感染経路は発生しない。

家族内感染が典型だが、換気不全の屋内で、感染者とマスクなしで長時間会話をすれば、密集はなくとも感染は起きる。

逆に通勤電車や飛行機では、満員、満席であっても、換気がされているうえにマスクなしで長時間会話する人がいないので、感染が起きていない。オフィスでも、換気とマスクの着用が徹底されていれば、クラスターは発生しない。

そう考えれば、列を作る際に距離を開けることなどもナンセンスであり、「マスクをして会話は控えめに」という注意で十分である。

旅行を含む移動そのもの、飲食そのものも、換気不十分の室内で、他人同士、長時間の宴会をするのでない限り問題がない。そこからポイントをずらした対応をやみくもに続けても、無意味に経済を損ねるだけだ。

「CSRは加点主義で取り組むべき」

motanikosuke

藻谷 浩介(日本総合研究所主席研究員/オルタナ客員論説委員)

山口県生まれの56歳。平成合併前の全3,200市町村、海外114ヶ国を自費で訪問し,地域特性を多面的に把握。地域振興、人口成熟問題、観光振興などに関し研究・著作・講演を行う。2012年より現職。著書に『デフレの正体』、『里山資本主義』 (KADOKAWA)、完本・しなやかな日本列島のつくりかた(新潮社)など。近著に『進化する里山資本主義』(Japan Times)、『世界まちかど地政学 Next』(文藝春秋)。 写真:青木優佳【連載】藻谷浩介の『ファクト』で考えよう

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キーワード: #CSR#新型コロナ

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