【連載】エシカルファッションの旗手たち

最高品質のウールを認証しているウールマークのもう一つの顔が、インターナショナル・ウールマーク・プライズだ。今でこそ、ファッション・デザイナーを発掘し、応援する賞は数々あるが、最古参とも言えるのがこのプライズだ。1950年代初頭から続くファッション界の未来のリーダーに与えられる、世界で最も著名な賞であり、新進気鋭のデザイナーを見い出し育てる最も歴史のある賞でもある。

2020年のプライズでは、テーマが設けられた。それが「サステナビリティ」。この賞を主催するザ・ウールマーク・カンパニーは、6万件の牧羊業者を代表する非営利組織だ。早くからサステナビリティ、トレーサビリティを徹底させているが、2020年はサステナビリティへの更なる強化を図っている。

この賞に対しての世界各国からの応募者は300人余り。その中から選ばれた最終選考に残った10人が、それぞれの視点からメリノウールの魅力とサステナビリティの工夫に取り組み、未来に向かう最高にクールなモードを創造した。

最終選考に残った若手デザイナー10人がグローバルファイナルに挑戦した

審査員は、多様な顔ぶれだ。「ディオール・メン」のキム・ジョーンズ、英国版ヴォーグ編集長エドワード・エニンフルなど、著名なデザイナー、エディターと並び、日本から招かれたのがアーティストの村上隆だ。

アンバサダーに冨永愛やカレン・エルソンら

審査員は多彩な顔触れ。村上隆(右)と「ディオール・メン」のキム・ジョーンズ(中央)
審査員を努めた英国版ヴォーグ編集長エドワード・エニンフル(左)

アンバサダーとして、トップモデルの冨永愛やカレン・エルソン、インフルエンサーのジャゼル・ザノッティ、ハリウッドスターのコリン・ファースなど、華やかな顔ぶれが揃った。ファッションがボーダレスな価値や感性を蓄え始めた今、多様な視点からの評価を重視する視線が感じられる人選だ。

アンバサダーとしてトップモデルの冨永愛も参加した

アワード発表前に、10人の最終候補デザイナーの作品が展示会形式で発表された。残布を無駄にせずにパターンに取り込む、自然な素材で染色する、パンチングの手法でウールに様々な表情を創造する、古い素材を用いて新たな装飾を生み出すなど、環境への負荷を最小限にし、再生可能でサステナブルなファッション・システムの構築に寄与する機能的で美しいクリエイションの数々だ。

優勝したリチャード・マローン(右から二番目)と受賞作品
優勝したリチャード・マローンの作品。植物由来の染色で、鮮やかな色彩とフォルムのモードを生み出した点が評価された

夜には、ファッションショーと受賞者の発表が行われた。優勝したのは、アイルランドのリチャード・マローン。自然でより刺激の少ない染色を行うため、従来の化学薬剤を排除し、インドの熟練された毛織物工組織の協力を得て、完全にオーガニックで植物由来の染色を使用し、独特の鮮やかな色彩とフォルムのモードを生み出した点が注目された。

受賞に際し、「サプライチェーンと協働し、我々の学びを多くのデザイナーと共有することで、ファッション業界に新たな対話が生まれたと感じた」とその成果を述べた。審査員の一人、村上隆は「彼のように、業界のルールの外から要素を取り入れ、何かを起こそうとする人が選ばれたことは、未来を作る上で素晴らしいこと」と高く評価した。

インターナショナル・ウールマーク・プライズではファイナリスト10人によるファッションショーが開かれた

2020年から設けられたイノベーション部門、カール・ラガーフェルド・アワードは、米国のデザイナー、エミリー・アダムス・ボディーに与えられた。服の破棄工場で見つけたデッドストックの生地を混ぜ、新たなファッションを構築。温もりや懐かしさを感じさせつつ、新たな感性を宿したクリエイションに高い評価が与えられた。

カール・ラガーフェルド賞を受賞したエミリー・アダムス・ボディー(右から2番目)と受賞作品

ファッションが未来に向けて大きくカーブを切る今、サステナビリティとクリエイションの融合は、まさに時代の必須の課題。日本の若手デザイナーも、未来に向かうこうしたプロジェクトには、果敢に挑戦してほしいと願う。(文中敬称略)

生駒芳子(いこま・よしこ)
雑誌VOGUE、ELLEを経て、2004年よりmarie claireの編集長を務める。08年10月に独立後、ラグジュアリー・ファッションからエコライフ、社会貢献、伝統工芸の開発事業まで幅広いトピックを追うジャーナリスト・プロデューサーとして活躍。日本エシカル推進協議会副会長。