動物福祉法の対象には、家畜だけではなく薬品や化粧品の開発における実験動物の扱いやペットも含まれている。

食品や薬品メーカーからリテール業まで、事業計画時には必ず配慮しなくてはいけない法令だが、ただ規制と基準を最低限クリアすれば可、という企業の受け身な態度が変わってきたのは90年代に狂牛病が人間の命まで脅かしはじめた頃からだ。

感染していない牛まで大量に屠殺するはめになり、規制すれすれの劣悪な集約飼育が感染拡大の原因として注目された。EUは英国産牛肉の輸出を10年間も全面禁止し、国内の消費量もがた落ちに。

事態が沈静化しても残り続けた食肉全体の安全性への不信感を払拭するため、企業は動物福祉への取り組みをアピールするようになった。

英国では今も、「アニマルウェルフェア」というとたいてい「家畜の福祉」を意味することが多く、取り組んでいるのは主に食に関連する業界だ。また、消費者も食肉購入の際に「フリーレンジ(放し飼い)」「赤いトラクターラベル(環境保全、動物福祉農場産という認証)」などの表示を確認して買っている。

英国のスーパーで売られている卵は、ほとんどが「フリーレンジ(放し飼い)」

消費者の立場からは、動物に対する福祉への倫理的関心もさることながら、福祉度が高いほど安心して食べられる肉や卵だというイメージがある。ストレスをできるだけ与えない飼育をする農場では、伝染病の流行も少なく抗生物質の投与率が下がり、成長ホルモンや人工飼料も避ける傾向にあるからだ。

ちなみに、EUでは1999年に「動物は意識と知覚を持つ生き物である」と定義、「5つの自由」の観点から動物福祉に関する規制を多く打ち出している。

その内容は、化粧品の開発での動物実験、バッテリーとよばれる密集ケージ養鶏および雌豚や子牛の仕切り飼いの禁止、家畜輸送時の配慮などさまざまな分野に及んでいる。

動物福祉の先駆を切った英国はEUの福祉法をフルに取り込んでいるが、EU加盟国の中には自国での動物の取り扱いに関する伝統や慣習などが法の定めと反するために遵守していない場合も少なからずある。

食糧保障と動物福祉

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