「ショーがない」水族館はどのようにできたのか

「環境水族館アクアマリンふくしま」(いわき市)は、「ショーがない水族館」。動物に芸を教えていない。全国屈指の来館者数を誇る「葛西臨海水族園」(東京・江戸川)にも、ショーはない。この両施設の立ち上げに携わった安部義孝氏に話を聞いた。

「水産が盛んな日本では魚類や鯨類に対する関心が高く、猿回しのような伝統芸もあるからか、イルカショーをやりたがる施設が多い。環境保護には賛成だが、一部の反捕鯨活動には環境帝国主義的なにおいも感じる。でも僕も、餌をやってジャンプさせるのを見せるのは、違和感がある。定時のショーがあると順路が崩れるし、イルカ用の丸いプールは場所もとる。それで僕は不要という意見だ」

安部義孝氏(撮影=瀬戸内 千代)

安部氏は葛西臨海水族園長、上野動物園長などを歴任し、現在は環境水族館アクアマリンふくしまの館長を務める。原発事故が起きてから客足が戻らないが、以前は年平均89万人の集客に成功していた。計画段階からかかわった2つの公営水族館には、鯨類がいないし、ショーもない。

子どもの頭がぶつかり合うほど狭いタッチプールに疑問を感じ、アクアマリンふくしまの屋外には、生き物と触れ合えるビーチやビオトープを作った。暖かい季節には、子どもたちが勇んで裸足になる。「イルカショーがないことに対する苦情は今もあるが、非常に少数。それより『たっぷり自然を楽しめた』といったコメントをいただくことのほうが多い」

芸より生態を見せたい

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瀬戸内 千代

オルタナ編集委員、海洋ジャーナリスト。雑誌オルタナ連載「漁業トピックス」を担当。学生時代に海洋動物生態学を専攻し、出版社勤務を経て2007年からフリーランスの編集ライターとして独立。編集協力に東京都市大学環境学部編『BLUE EARTH COLLEGE-ようこそ、地球経済大学へ。』、化学同人社『「森の演出家」がつなぐ森と人』など。

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