【連載】地球の目線2021(2)
この年末年始は、想定以上のコロナ第三波に例年より早い寒波・豪雪の到来、そしてピークを前倒しして猛威を振るう鳥インフルエンザが重なった。いずれも「地球目線」とシステム思考が要求されるサステナビリティ課題だ。
今から7年前、2013年のクリスマスから翌14年の新春も、北極を巡る寒波(極渦)の猛威で世界が凍りついた。アメリカ東部の異常低温で都市機能が麻痺した数日後には、イギリスが爆弾低気圧による凍てつく豪雨で冠水、一週間後には偏西風に乗って日本にも豪雪をもたらす寒波が巡回してきた。その背景には北極圏で加速する温暖化があった(ちなみに夏季に融解する北極海氷の最少化記録は2012年)。
グローバルな温暖化は、ときに局所的(ローカル)には寒冷化と豪雪をもたらす。猛暑も極寒も同じコインの表裏であり、「雪のないクリスマス」も「ドカ雪で外出もままならぬ正月」も共に地球温暖化の顕れだ。その背景にはグローバルな気候メカニズムがある。
北極圏の急激な温暖化は、偏西風の蛇行と気団の停滞=ブロッキングをもたらす。偏西風(ジェット気流)は温帯の暖気と極域の寒気を隔てる境界であり、その寒暖のインターフェイスで働くグローバルな熱の再配分機構なので、極域が高温化してこの寒暖差が縮まると、ジェット気流を駆動するメカニズムが変調をきたす。
「蛇行」とはこうして寒暖の境界線が緩んだゴムのように張りをなくした状態で、その結果、北の寒気団が異常に南まで張り出して日本などに豪雪をもたらすかと思えば、モスクワやシベリアに亜熱帯のような熱波が何週間も居座るといった現象が起こる。
ロシア・ウクライナで5万人が亡くなった2010年の熱波もこうしたメカニズムでもたらされたが、その結果この世界有数の穀倉地帯で小麦の収量が半減、プーチンが禁輸措置を取った。
かねてから干ばつに苦しみ、ロシア・ウクライナからの輸入穀物に頼っていた中東諸国はたちまち食糧難に陥り、それが同年の「アラブの春」ひいてはシリア内戦の引き金ともなった。