論説コラム
国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は日本でも大きな反響を呼んでいるが、国連開発計画(UNDP)は、企業活動などがSDGsの目標(17ゴール)達成にインパクト(効果)があるかどうかを評価するスタンダード(基準)「SDGインパクト」を早ければ2021年中にも策定、認証制度をスタートさせる。
環境やサスティナビリティに関しては既に様々な原則や指針、ガイドラインが存在するほか、ESG基準についても統一化の協議が進んでいるが、SDGインパクトが実現すれば、社会的課題と開発を包括する認証基準は世界でも初めてとなる。
2030年の目標達成年に向けて、これが信頼できる世界的な標準になるかどうか、日本企業の対応を含めて注目される。
地球規模の社会的課題を解決するためのSDGsはMDGs(ミレニアム開発目標)の後継として2016年から始まった。
政府やNGOに加えビジネスセクター(企業)を取り込み、トライセクターを担い手にしたことや、途上国の貧困削減たけでなく先進国の多様な社会的課題を対象にしたことから世界的に企業の関心が強く、日本でも経団連が企業行動憲章を改定して政府と二人三脚で本格的に取り組みを始めた。
ただ、関心の高さと熱意の割には具体的なプロジェクトは必ずしも多くない。大半の企業は自社の事業をSDGsの各ゴールと紐づけ「わが社はSDGsに貢献しています」とPRするだけの、いわゆる「インサイドアウト」にとどまり、経営モデルのイノベーションに結びつけられずにいる。
UNDPでは企業のこうした消極的な姿勢を、SDGs達成に企業の貢献を生かす「アウトサイドイン」に何とか変えられないかと知恵をしぼってきた。その背景にはSDGsの取り組みの遅れがある。
特に飢餓撲滅(ゴール2)や気候変動(ゴール13)、生物多様性(ゴール15)では逆行しているくらいである。SDGs達成には年間5~7兆ドルの資金が必要と言われており、UNDPではこの3分の1程度を新たな認証制度SDGインパクトで呼び込みたい意向だ。