「最低賃金」から「生活所得」保証へ

【連載】フェアトレードシフト

ベルギーチョコレートといえば、高級チョコレートの代名詞。大手チョコレート原料メーカーもベルギーに集中している。ベルギーは、年間30万㌧以上のカカオ豆を輸入しており、

その規模はオランダ・ドイツに次いで世界第2位。チョコレートの輸出量でも世界第2位の規模だ。そのベルギーで、2018年12月、アレクサンダー・デ・クロー副首相(当時)主導のもと、同国の大手メーカー、小売業界、市民社会、労働組合などが集結し、ベルギーチョコレートのサステナビリティを目指したパートナーシップ文書「BeyondChocolate」が署名・締結された。

児童労働や森林伐採の撲滅、カカオ農家への生活所得の保証にコミットする、とした文書だ。2025年までに、ベルギーで製造・取引されるすべてのチョコレートをサステナブル認証など、基準を満たしたものにすること。2030年までにすべてのカカオ農家が生活所得を得られるようにすることとしている。

署名企業には、バリーカレボーなど世界的チョコレート原料メーカーや、モンデリーズ(キャドバリー、オレオなど)といった大手菓子メーカーも含まれている。

ここで取り上げたいのはカカオ農家の「生活所得」だ。もはや「最低賃金」ではまともな暮らしをするには十分ではなく、いかにすべての人たちが人間らしく生活するための「生活所得・生活賃金」を得られるかというのが世界的なアジェンダだ。Global Living Wage Coalitionは「生活所得」の定義をこう定めている。

「その土地において、世帯のすべての人間がまともな生活を送るのに必要な年間収入。まともな生活水準の要素には、食料、水、住居、教育、健康、交通、衣服、その他、突然の出費も含めた欠かすことのできないニーズを含む」

農家の一日平均収入は約80円

有料会員限定コンテンツ

こちらのコンテンツをご覧いただくには

有料会員登録が必要です。

nakajimakaori

中島 佳織(認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長)

化学原料メーカー勤務、国際協力NGOでアフリカ難民支援やフェアトレード事業への従事、日系自動車メーカーのケニア法人勤務を経て、2007年より現職。グリーン購入ネットワーク理事。共著に『ソーシャル・プロダクト・マーケティング』(産業能率大学出版部)など。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..