もう一つはオクスフォードとケンブリッジという、有名大学を擁する2つの街をダイレクトに結ぶイースト・ウェスト・レイル。どちらからもロンドンへは特急で直行できるが、直線距離にして107キロ離れた2つの街の間を電車で移動しようとすると現状ではとても不便だ。大回りして他社線間を乗り継ぎしなくてはならない。

時間だけでなく費用も車とは比較にならないほどかかり、しかも環境に負荷を与えているとしてこの路線の復活は長らく望まれていた。2016年に一部分が開通しており、今回の予算配分で新しい駅の建設を含む次のフェーズを2025年までに完了できる運びとなった。

イースト・ウェスト・レイルの廃線復活プロジェクトは直接的に1500人の雇用を創出するが、それだけではなく周辺のエリアに研究、開発とイノベーション施設のクラスター作りを目指す「ケンブリッジーオックスフォード・アーク」構想にとっても非常に重要なグリーンインフラとなる。

コロナによる移住ブームも重なりこれから住宅需要の増加が見込まれ、地元への経済効果は2025年の部分開通でも110億ポンド(約1.6兆円)と試算されている。プロジェクトは単に路線を復元するだけでなく、周辺の自然や野生動物の住環境保全などにも配慮がなされている。

そして現在の予定ではまず環境対応型の低排気ディーゼル車両を走らせ、将来は電動に変えていく計画だが、水素電池などの技術が急速に進歩していることから見直しの声が挙がり、初めから電気車両を導入することを検討中だ。イースト・ウェスト・レイル全線開通は2030年の予定。

今回選ばれた2カ所は、さらに全国にある廃線ルートの再活用見直しにつながるパイロットケースと目されている。英国での短距離移動は自動車に偏よるが、欧州では短かい距離なら飛行機ではなく鉄道を使おうという機運も高まっている。環境に配慮しながらも経済効果を損なわない移動手段、として鉄道が再び注目されていることは興味深い。

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