世界で進む環境に配慮した海洋経済、日本の勝機は

視聴者から日本の勝機を問われた足達氏は、沿岸のブルーカーボン(海中に炭素を蓄える藻類や干潟)への期待を述べた。

笹川平和財団の角南篤理事長は、「まだ定義があいまいなブルーエコノミーは、これから標準獲得の闘いに入る」と危機感を語った。同財団海洋政策研究所と日本海洋政策学会は、2020年8月に「国連海洋科学の10年に関する研究会」を立ち上げ、2021年2月に国内委員会を設置。ブルーエコノミーの国内での推進と同時に、MaOIプロジェクトなどを英語で発信してきた。

角南氏は、2025年の大阪万博を「海の万博」と位置付け、海洋国家・日本のブルーカーボンやサステナブルシーフード、洋上風力などを世界に打ち出す計画も披露した。

パネルディスカッションに登壇した国土交通省の久保麻紀子・海洋政策課長は、海中で定置網や港湾施設を点検する無人潜水機など、「海のドローン」と呼ばれる次世代モビリティを紹介。「まず沿岸域の困りごとを解決して、科学技術や海への関心を高めたい」と抱負を述べた。

MaOIプロジェクトは「海洋産業の振興」と「海洋環境の保全」の両立を掲げている。そのため同セミナーでは、海へのダメージを数値化して把握することの重要性も共有された。

足達氏は、「SDGsの17個の目標は階層化できる。海の豊かさ(環境)は1階部分。健全な地球や社会無くして健全な経済や企業経営は成立しない」と、コロナ禍を踏まえて強調した。

MaOI機構統括プロデューサーの橋本正洋・東京工業大学教授は、「ブルーエコノミーへ世界中が動き始めている。静岡も、その動きの一つにしたい」と意欲を述べた。MaOIセミナーは、2021年度も引き続き開催される。
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瀬戸内 千代

オルタナ編集委員、海洋ジャーナリスト。雑誌オルタナ連載「漁業トピックス」を担当。学生時代に海洋動物生態学を専攻し、出版社勤務を経て2007年からフリーランスの編集ライターとして独立。編集協力に東京都市大学環境学部編『BLUE EARTH COLLEGE-ようこそ、地球経済大学へ。』、化学同人社『「森の演出家」がつなぐ森と人』など。

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