【連載】エシカルファッションの旗手たち

もし自分が、400年もの伝統を持つ世界の跡取りとして生まれたなら、いったいどんなふうに生きていけば良いのだろうか。そんな問いかけに、一つの答えを見つけた青年がいる。有松絞りをファッション、インテリア、アートとつなげて、グローバルに表現している村瀬弘行さんだ。

1 2019年春夏コレクション。ストライプ柄の織り柄のある素材に帽子鎧段絞りを施したコットンドレス。6万円 22019年秋冬コレクション。カシミヤ素材のニットケープに雪花絞りがランダムに散らばる。コーディネートに合わせて上下逆さまに着ることができる。10万 32019年秋冬コレクション。まだら絞りのハイゲージのウールニット(5万1000円)とギャバジン素材の染め分け絞り柄ス カート(5万7000円) 4-62019年秋冬コレクションより。シームレスのニット素材にピースダイで様々な絞りを施した。4は雪花絞 5はまだら絞り、6は板締め絞り※価格はすべて税抜き

販売されているスカーフは、有松絞りという範疇を超えて、美しくアーティスティックでモダンなスカーフという印象。伝統という言葉より、アートという言葉の方が似合う風情だ。そしてその印象こそが、村瀬さんが目指す世界なのだという。

絞りに囲まれて育った村瀬さんだったが、もとより父親の仕事を継ぐ気持ちはなかったという。四代目の父親も、息子に継がせるということは言わなかった。

「小さい頃から有松絞りが当たり前すぎて、その価値に気づかなかった」と村瀬さんは言う。「それより、アートに興味があり、美大に行きたいと思っていました」。そう思い立ってからの村瀬さんは、アートをめがけて猛ダッシュ。国境を越えて、イギリス、そしてドイツへと向かう。

ドイツのフラットシェアで一緒になった友人、6歳年上の旧東ドイツ出身の男性、クリスティアン・ディーチさんとの出会いが、村瀬さんの人生を大きくシフトさせる。

■「この絞りこそ探していたものかもしれない」

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