「食のバリアフリー」を目指し、ユニバーサルデザインのカトラリーを開発・販売する猫舌堂(大阪市)はこのほど、唇が感動する「iisazy(イイサジー)」シリーズから箸を発売した。「iisazyお箸」は一般的な箸よりも口元部分が細くなめらかで、摂食嚥下障害など口の中がデリケートな人でも食べやすい。熊本の老舗箸メーカー「ヤマチク」(熊本県南関町)とコラボし、素材に竹を使った。(ライター・遠藤一)

新発売の「iisazy(イイサジー)お箸」(税込1490円)。竹特有のしなやかさ・なめらかさがあり、食べやすい。

「猫舌堂」はこれまで、一般的なカトラリーに比べ、口に入れる部分がフラットで小さい「iisazy spoon」「iisazy fork」を販売。摂食嚥下障害があっても食べやすく「食べる喜び」を取り戻せるきっかけを提供する商品を作ってきた。

開発のきっかけは、代表の柴田敦巨さんのがん経験から。柴田さんはがん手術後に顔面にマヒが残り、うまく食事を取れなくなったことで、外食しにくくなってしまったのだ。

2014年当時、関西電力病院の看護師だった柴田さんは「耳下腺がん(腺様のう胞がん)」の手術を経験。耳下腺の近くには、顔面神経という顔の筋肉を動かす神経も通っており、手術では全摘の際に、顔面神経も同時に切除することに。顔の左半分に、顔神経マヒが残ることになった。

辛かったのは自分の気持ちの落ち込みよりも、周囲の人が「どうしたの」と心配する姿や、柴田さんの変化を見てぎこちなくなってしまう瞬間だったという。

食事を取る際にも、片側の唇が動かず食べこぼしなどが出るようになった。「食べている姿を見られるのがつらかった」という柴田さんは、友だちとの食事が楽しみだったが、行きにくくなってしまったという。

■ 「あるある」話から起業へ

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