がん当事者が「箸」開発、「食べる喜び」取り戻す

「見た人に『(普通のカトラリーと)どこが違うねん』と言われるのが一番うれしい。自分だけが違うものを使っているのではなくて、同じ時間を共に使っているという喜びが、食べる喜びにつながっている」(柴田さん)

猫舌堂のミッションの一つに「当事者になったからこその価値を生かす」というものがある。柴田さんは、事業を「ピアメイド」と呼ぶ。ピアとは当事者間でのかかわりとして、仲間や対等を意味する言葉だ。

「同じ境遇の人たちとデザインした、新しい価値。それをアップデートしていきたい」と語る柴田さん。「製品を通じて、一人じゃないと感じてほしい。誰でも食べる喜びや、笑顔で過ごす日、その人なりの豊かな時間を送ってほしい」。

ゆくゆくはオンライン、オフライン両方のコミュニティ作りにも力を入れたいという。

「カフェのような場所をつくって、困っていることや、みんなどうしているのか話を聞いたり打ち明けたりする場所があるといい。がん治療に伴う脱毛の外見ケアなど、病院ではできないケアやお手伝いもできたら」

柴田さんは、当事者が社会とつながる、自分なりの生活を送る助けとなる場所作りを思い描く。いつか猫舌堂カフェができる時、きっと様々な「iisazy」シリーズのカトラリーが、そこで使われているに違いない。

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