■新型コロナと資本主義:新自由主義の終えん①
山内康一・衆議院議員(立憲民主党SDGsワーキングチーム座長)■
1980年代の英サッチャー政権から、米レーガン政権、そして日本の中曽根政権以降に大きく影響を与えた「新自由主義」が終えんを迎えつつある。新型コロナで所得格差や失業問題が深刻化し、先進国を含めた各国政府にとって緊縮予算(小さな政府)では対応できない状況になったからだ。各界の専門家に話を聞いた。(オルタナ編集長・森 摂、オルタナS編集長・池田真隆)

※「新自由主義」はシカゴ大学のミルトン・フリードマンやフリードリヒ・ハイエク(いずれもノーベル経済学賞受賞)が提唱した考え方で、「自己責任」を基本に「小さな政府」を推進し、グローバル化、規制緩和による競争促進、均衡財政(プライマリーバランス)、福祉・公共サービスなどの縮小、公営事業の民営化などの経済政策を指す。日本で国鉄(現JR)や電信電話公社(現NTT)、郵政事業(現日本郵政)など3公社5現業が民営化されたのも、「新自由主義」の流れだ。
ーー山内議員はブログで「新自由主義の終わりとその先」というコラムを書かれましたね。
「日本でも新自由主義はすでにリーマンショック後に終わったと認識していますが、なかなか議論されませんでした。安倍政権が大学教育の無償化など、リベラルな政策をとっていたこともあります。その後、新型コロナ禍で感染者が増え、所得格差が拡大したことで新自由主義が終わったことが可視化されたのです」
「ところが、菅首相は新自由主義が終わったことに気付いていないようです。仲良しの竹中平蔵さんや高橋洋一さんの意見しか聞かない。昔からの人間関係で政策を考えている。菅政権を『最後の新自由主義政権』にしないといけません」
――新型コロナを機にEU(欧州連合)は「グリーンリカバリー」を掲げ、米バイデン政権も格差や環境対策で前年比3割増の6兆ドルもの予算を議会に要求しました。
「英米もEUも確実に変わっています。一方、菅首相は、脱炭素にシフトするのは良いが、原発を新増設したり、リプレースしたり、アンモニア発電などにも手を出そうとしています。アンモニアはエントロピーの法則からも割に合わないし、豪州で石炭から作った水素を輸入しても意味がありません」
「いまだに原発を動かしているのは、利権に群がり金儲けしようとしか考えていないからでしょう。送電線も原発も国有化すれば、欧州並みの再エネを目指せます」
「日本には、洋上風力やバイオマス発電などを利用できる余地があります。化石燃料以外でも選択肢は豊富にあるのに、やっていないだけです。地熱はベースロード電源にもできます」
「近々発表する立憲民主党の経済政策としても、住宅の省エネ化も進めます。断熱、再エネ化、バリアフリー化を提案しています。わが党にはSDGsワーキングチームがあり、私が座長を務めています。SDGs基本法を作ろうとしています」
■富裕層や法人税の税率アップが課題