■今さら聞けないサステナビリティ重要単語:社会起業家
社会起業家とは事業を通して社会課題の解決に取り組む起業家を指します。貧困層向けに低金利の無担保融資を行うグラミン銀行を立ち上げたムハマド・ユヌス氏や世界70カ国以上で社会起業家の支援を行うアショカ・ファウンデーション創業者のビル・ドレイトン氏らが有名です。(オルタナS編集長=池田 真隆)
社会課題の解決に寄与する事業をソーシャルビジネスと呼びます。普通のビジネスとソーシャルビジネスの違いはどこにあるのでしょうか。
ソーシャルビジネス業界大手のボーダレス・ジャパン(東京・新宿)では「マーケットから放置された人を救うビジネス」と定義づけています。
社会の不憫、不満、不便などの解消を目指すビジネスは、マーケットニーズありきのため、「ソーシャルビジネスとは呼べない」と断言しています。
市場規模ではなく、社会課題の有無を優先して参入を決めるため、「市場をつくりだすこと」が社会起業家には求められます。さらに、救うのがマーケットから放置された人ということで、サービスの受益者から対価を受け取ることが難しい場合が少なくありません。つまり、 社会起業家にはより高度なビジネススキルが求められるのです。
ソーシャルビジネスが社会に広がった経緯を説明します。1980年代以降 、当時のレーガン政権やサッチャー政権で社会保障費が大幅に削減されたため、様々な公共サービスを補完する形で現れました。
日本には21世紀に入ってからソーシャルビジネスや社会起業家に関する書籍などが発行され、注目され出しました。ですが、もともと日本には事業で社会課題を解決する取り組みがありました。
鎌倉時代以降、近江商人が持っていた哲学「売り手 よし、買い手よし、世間よし」の思想は、まさに社会起業家の精神に通じており、松下幸之助氏の「水道哲学」、渋沢栄一氏の『論語と算盤』などが象徴するように、日本の経営者が持ってい た経営哲学には社会起業家的な考え方が含まれていました。