海洋汚染はプラスチック問題の一部にすぎない

2000年頃、成長鈍化に直面した欧米資本の日用消費財産業は、巧みなマーケティングにより豊かさの象徴として「プラスチック容器の日用品」を新興国市場に持ち込んだ。そのほとんどが貧困層をターゲットとし、多層構造でリサイクル困難なプラスチックを使用した1回分の個別包装品である。食品に関しても、スナック菓子や加工食品が生鮮食品に取って代わった。これら新興国の多くが、プラスチックの回収や廃棄処理インフラが整っていないことから、大量の廃プラスチックを適切に処理することができずに、環境汚染と健康被害に見舞われている。

イラスト提供:The Story of Stuff Project

■プラスチックをめぐるリサイクル神話

プラスチックは素材により処理法が異なるため分別が必須であるが、ペットボトルや食品トレーを除けば素材ごとの分別回収はほとんど行われておらず、リサイクル処理施設に膨大な負担がかかる。そのため、世界中で回収された廃プラスチックの32%を新興国へ押し付け、54%は埋め立てまたは焼却している。処理インフラや技術を伴う日本ですら実質的なリサイクル率が27%であるばかりか、そのほとんどがダウンサイクルである。

欧米の石油化学企業はリサイクルや廃棄処理インフラに投資を始めたが、今後さらに増産されるシングルユースプラスチックの対応には到底及ばない。蛇口の水を止める、つまり過剰な供給を止めることが最重要課題であり、その上でリデュース・リユースの仕組みをつくることが必要である。

(参考)「THE STORY OF PLASTIC」 ショートアニメバージョン
https://youtu.be/iO3SA4YyEYU

terui_keiko

照井 敬子

薬樹株式会社SDGs推進担当マネジャー・NPO法人Liko-net代表理事 医療という人の命に関わる仕事だからこそ、持続可能な仕組みを大切にしたいとの考えのもとSDGs推進を担う。また、NPO法人としてサステナブルをテーマに生活者に向けた啓発イベントを行う。

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キーワード: #サステナビリティ

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