欧州中央銀行(ECB)は7月、金融政策戦略を「物価目標2%」に修正し、「気候変動関連政策を考慮した新たなマクロモデルの構築」など気候変動対策関連の6つの行動計画を公表した。金融政策において気候変動と持続可能性に重きを置いた。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

ラガルド総裁は「金融政策において気候変動と持続可能性への熟慮は中心的な重要性を持つ」「ECBの最高意思決定機関である政策理事会は、気候変動に関する行動計画にコミットしていく」と強調した。
気候変動対策の具体的行動計画は、次の6点だ。
1,気候変動関連政策を考慮した新たなマクロモデルの構築
気候変動と経済に対する関連政策などの金融政策が家計や企業へ影響するかを理論的に分析し、新たなマクロモデルを構築する。2,気候変動リスクを分析するための統計データ作成
グリーン金融商品と金融機関の二酸化炭素排出量、および気候関連の物理的リスクへのエクスポージャー(さらされている度合い)をカバーする新しい指標を開発する。3,担保や資産購入における適格用件について、サステナビリティにかかる情報開示を要求
民間部門の資産に対する開示要件を、新しい適格性基準として、または担保および資産購入に対する区別化された取り扱いの基礎として導入する。4,気候変動リスクに関するストレステストの実施と格付け機関への処置
2022年に気候ストレステストを開始し、ユーロシステムの気候変動へのリスクエクスポージャーを評価する。また信用格付け機関が、気候変動リスクを信用格付けに組み込む為に必要な情報の開示の有無を評価する。5,ユーロシステムの与信業務における担保枠組みに気候変動リスクを考慮
担保や資産購入における適格用件について、サステナビリティにかかる情報開示を要求する。6,社債購入プログラムにおける気候変動関連基準の採用および購入配分の見直し
現行の社債購入プログラムに気候変動に関連した基準を組み込んだ上で、購入配分も修正する。2023年第1四半期(1~3月)までに、気候候変動関連の情報開示を始める。
ECBはプレスリリースで「EU政策と歩調を合わせる格好」「政治や議会が一義的な責任を負うものの、ECBも責務の範囲内で貢献すべき」と述べている。 中央銀行として中立性に配慮しているが、担保受け入れや資産購入で気候変動関連の判断基準を盛り込めば、企業の資源配分のあり方に中央銀行が介入するとの懸念もある。