コンクリートの床や柱を残した上で自然素材の壁を取り付け、新築で建て直すよりCO2排出量を約85%削減した8階建てのビルが9月17日、名古屋市内に完成した。建設会社の自社支店ビルとして、単なるリノベーションではなく、建設残土や廃プラまで活用した先進技術の実証の場として注目されそうだ。(オルタナ編集委員=関口威人)
既存の柱や床を活用、外壁面後退で西日カット
大阪市に本社のある淺沼組が、名古屋支店ビルのリニューアルとして取り組んだ。同社の新しい環境配慮型プロジェクト「GOOD CYCLE BUILDING」の第一弾だという。
もともとのビルは1991年に建てられた地下1階、地上8階の鉄筋コンクリート造。幹線道路に面した正面はガラス張りで、西日が直接差し込む構造だった。
リニューアルで構造上の柱と床は最大限残し、外壁面を2.5mセットバックして植栽のできるベランダを確保。化粧用の柱や天井面には奈良・吉野杉の丸太や製材をふんだんに用いた。
建設残土も再利用、社員自ら壁塗り
内壁の一部は建設現場から出る土をブロック状にして積み上げた。同社技術研究所で開発し、「還土(かんつち)ブロック」として特許出願中だという。さらに、不純物を除去した建設残土約12トンを壁土にして、社員や関係者が自らこてで壁塗りした。廃プラスチックや杉の端材を混ぜた建材も使っている。
こうした建築時のエネルギーをCO2換算すると、新築として建て直した場合に比べて排出量が約85%削減される計算になるという。
光と風取り入れ、電力使用量も削減
また、トップライトを設けたり、風の通り道を確保したりして照明や空調の電力使用量を削減。運用時のCO2排出量は50%以下に抑えられる。これにより、建物の省エネ性能などを表す「ZEB ready」や「WELL認証」の取得も目指す。
内覧会で同社の浅沼誠社長は「当社の起源である宮大工はものを大事にしてきた。その原点に立ち返り、今あるものを生かして持続可能な社会に貢献したい」とあいさつ。デザインパートナーとして参加した建築家の川島範久さんは「築30年ほどの中規模オフィスビルの需要は今後も多くなる。今回のように低負荷、低コストでリニューアルできれば、オフィス以外にも可能性があるだろう」と述べた。
今回の手法を取り入れたプロジェクトは順次、展開していく計画だという。