今回から優秀な統合報告書を取り上げ、そのレビューを連載していきます。オムロン「統合レポート2021」の特色の一つは「全社的編集体制」です。執行役員グローバルインベスター&ブランドコミュニケーション本部長が編集長を務め、全社45人の編集体制で取り組んでいます。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

同社のブランドコミュニケーション部はその理由を「統合報告を『企業価値向上に不可欠なステークホルダーとの対話の機会』」と位置づけています。経営を含めた全社プロジェクトとしてクロスファンクショナルな編集体制で取り組んでいます。

統合レポートに盛り込む価値創造ストーリーは、編集委員でもある広報担当者が、各事業や本社機能本部の担当と協働して制作することで、財務情報だけでなく非財務情報の充実を図っています。(参考)オムロン統合レポート2021 p119-120「統合レポート2021編集委員」 

2点目の特徴は、CFOインタビューで「進化し続けるROIC経営が自走的成長を実現する」と示されている「ROIC経営」です。

同社は「企業理念を経営の求心力の原点、発展の原動力とする「企業理念経営」に取り組んでいます。この企業理念経営を推進する仕組みが「ROI経営」です。「CFOから財務的な情報をROICを軸に発信することで、当社の企業理念経営の確からしさを表出することにチャレンジしている」そうです。(参考)同p25-28「CFOインタビュー」  

同社の「ROIC経営」では「ROIC逆ツリー展開」として、ROICを自動化率や設備回転率といった製造部門のKPIにまで分解しました。部門担当者の目標とROIC向上の取り組みを合致させ、「ポートフォリオマネジメント」として、全社を約60の事業ユニットに分解し、ROICと売上高成長率の2軸で経済価値を評価しています。

オムロンの統合報告書作成のこだわりは、「統合レポート2021発行にあたって」に3点の記載があります。

1点目は、価値創造ストーリーを「3つの時間軸」すなわち「長期=10年」「中期=4年」「短期=対前年」の組み合わせで構成したことです。

長期視点での価値創造の歩みを表し、「ビジネス」セクションの各事業の説明で中期の視点を取り入れ、2020年実績を短期にまとめることで年次報告書の役割を担保しています。

2点目は「ガバナンス」セクションにおける社外取締役と社外監査役の登場です。「社外取締役と社外監査役からガバナンスの実効性を語ってもらうことが、透明性の担保と、市場との建設的な対話の進化につながると考えた」とのことです。

3点目は、「今年度から『事業報告』と『有価証券報告書』と『統合レポート』の役割を明確に」し、「これらの開示文書を財務情報と非財務情報を掛け合わせ、一つの『価値創造ストーリー』でつなぐことに挑戦した」ことです。

同社のブランドコミュニケーション部の柳原優氏は、「非財務価値につながる情報を多角的に描き出す」ことで「有価証券報告書を補完する編集にこだわった」と強調しました。(参考)同p120「統合レポート2021発行にあたって」