世界に誇る合繊の郷から生まれた「mono-bo」

■エシカルファッションの旗手たち:「mono-bo(モノーボ)」
(ファッションジャーナリスト・生駒芳子)

日本が誇る産業の一つである繊維・アパレル産業が、1990年代以降、輸入品に押され、元気を失い斜陽産業とまで言われるに至っている。

ファッションの自給率が3%にまで落ち込んでいるという昨今、果たして日本を「ファッション大国」と言えるのか、甚だ疑問に思える。「ファッション消費大国」ではあっても、「ファッション供給大国」ではないのだ。

一方で、多くのラグジュアリーブランドが、日本の高品質な繊維に注目し、買い付けも熱心に行っているという事実もある。

その代表が、デニムやニット、北陸3県の合繊。素晴らしい品質を生み出し、欧米のブランディングに大いに寄与はしていても、自らのブランディング、高い価値付けが成されてこなかったというのが現状だ。コロナ禍は、この現状にさらに打撃を与え、繊維産業の勢いの落ち込みに拍車をかけている。

小松マテーレが展開するオリジナルショップ「マテプラ」

能美の繊維メーカーがエシカルな新ブランド立ち上げ

こうした状況の中から、産地の活力を取り戻す突破口を作ろう!という強い思いのもとに、新たなプロジェクトが誕生した。

繊維産地・北陸を代表する繊維メーカー、小松マテーレ(石川県能美市)が立ち上げたファクトリーショップ「mono-bo(モノーボ)」だ。小松マテーレは、染色加工や機能性加工の技術を駆使して、さまざまな化学素材を加工する日本を代表するメーカーであり、ファッション、スポーツ衣料、インテリア、メディカル、建築資材など、幅広く活動を展開してきているが、2021年、未来を見据えての新たな事業が始まった。

工場直販型のファクトリーショップ「モノーボ」

もとより、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から「小松マテーレ・サステナビリティ・ビジョン」が2021年に策定されている。「気候変動対策」では、工場での省エネ、生産体制の効率化をはかり、製造時のエネルギー量の少ない製品の開発に挑んでいる。

「循環型社会づくりへの貢献」では、製造段階での水や廃棄物、有害化学物質の削減、国際認証の取得などに着手。さらには「環境配慮商品の拡大」「防災・減災への取り組み」「地域貢献と社員の成長」など、地球環境の保全や人権に配慮したエシカルなビジョンを掲げている。

2020年から、小泉進次郎・環境大臣(当時)の号令のもと、日本の繊維・アパレル産業のサステナビリティを高めるアクションがとられているが、その追い風のもと、小松マテーレでは、繊維のクオリティの高さにクリエイティビティとサステナビリティをかけ合わせて、エシカルで夢のあるブランディングをスタートさせている。

遡ること6年前の2015年に、小松マテーレはすでに、先鋭的な拠点作りを始めている。

繊維の歴史や生産工程が学べる「ファブリック」のラボラトリー「fa-bo(ファーボ)」を、本社内に開設。先端材料の炭素繊維を用いて耐震補強された建築設計を手掛けたのは、世界的な建築家・隈研吾氏だ。

今や「もの」より「こと」の時代と言われるが、ものがどのように作られているか、その物語こそが価値となる――。それは、日本のアパレル産業が今まで疎かにしていた視点であり、それこそが未来を見据えての問いかけと言える。

カラフルで楽しい、クリエイティビティに溢れたバッグ

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yoshikoikoma

生駒 芳子(ファッションジャーナリスト)

ファッションジャーナリスト、アート・プロデューサー。VOGUE、ELLEの副編集長を経て2008年より「マリ・クレール」の編集長を務め、独立。ファッション、アート、デザインから、社会貢献、クール・ジャパンまで、カルチャーとエシカルを軸とした新世代のライフスタイルを提案。地場産業や伝統産業の開発事業、地域開発など、地域創生に数多く取り組む。2018年より、伝統工芸をベースにしたファッションとジュエリーのブランド「HIRUME」をスタートさせる。 アンダーグラウンド(モデル冨永愛個人事務所)代表、三重テラスクリエイティブ・ディレクター、日本エシカル推進協議会副会長、内閣府・消費者委員会委員、江戸東京きらり委員、東京2020ブランドアドバイザリーグループ委員、WEF(Women's Empowerment in Fashion)理事、認定 NPO 法人サービスグラント理事など。 連載:エシカルファッションの旗手たち

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