飛騨の木工会社、千年先を見据え「木を使い切る」

飛騨、紡げ次の千年―森の思想

飛騨の山奥に、サステナビリティを体現する企業として外せない会社があります。それは、高山市郊外にあるオークヴィレッジという木工会社です。オークヴィレッジは一貫した循環型社会の構築を目指す思想、パーパスを帯びた企業です。(中畑 陽一)

高山市郊外にあるオークヴィレッジ

オークヴィレッジは、稲本正氏が日本の戦後発展の在り方を根本的に考え直すために、東京から飛騨に引っ越し創り上げた実験的な組織体(コミュニティ)でした。成功の鍵は「住民の高度な技」であると分析し、1974年の設立当時より飛騨の職人に学びながら、千年先を見据えた持続可能な資源である木を中心に据えた事業に挑戦しました。

その事業は、かねてより国産材を利用しています。お椀やクラフトから家具、そして家まで、適材適所で、木を使い切ることも徹底しています。さらに家具は、長く使ってもらうために、塗りなおしなどのメンテナンスを重視、使えば使うほど味わい深さを増します。端材で作られるクラフトは、より気軽に木の生活に触れる機会を提供しています。

塗り直しなどのメンテナンスを重視して、使えば使うほど味わいが出る

木材の持続可能性だけではなく、地域文化や人材の持続可能性にも真剣に取り組んでいます。創業以来、職人が木取りから仕上げまで一貫して受け持つため、すべての工程をこなせる技が必要となるためです。

オークヴィレッジの持続可能性経営の真骨頂と言えるのが、1991年から続いている「森林たくみ塾」ではないでしょうか。単に木工技術を身につけるのみならず、森林文化を学び、広い視点で社会改題を解決できる人材を育てるための人材養成機関です。

人の循環だけでなく、森の循環の取り組みも両輪で行っています。それは、森林たくみ塾で実践されている育林に加え、1981年から森づくりの実践と啓発のために進めている「どんぐりの会」など、森づくりを実践しています。

最近ではそのノウハウを、自治体向けに提供し、林業の六次産業化と地域活性化を推進するという先進的な挑戦をはじめました。また昨年その持続可能な循環型社会を目指す企業姿勢を『緑の国2020 環境経営宣言』としてまとめ、その精神を次世代につないでいます。

今まさに、サステナビリティの実現なしには社会も経済も進めることが不可能な時代に突入しました。創業時から、持続可能な社会のあり方を模索し続け、進化した思想と、実践で培っていた関係性とノウハウに学ぶものは多いのではないでしょうか。

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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