2021年9月26日に実施したドイツ連邦議会総選挙(基本定数598)では、メルケル前首相の出身政党「キリスト教民主同盟」(CDU)が議席を大きく減らし、代わりに中道左派のドイツ社会民主党(SPD)が53議席増、「同盟90/緑の党」も51議席増やした。今回の緑の党躍進の背景は何だったのか。(中 東生)

1979年に設立したドイツの緑の党

7月豪雨の記憶が冷めやらぬうちの総選挙

7月14日に西部ラインラント・プファルツ州などを襲った集中豪雨は、死者・行方不明者を合わせて331人(CNN報道)と、ここ数十年で最悪の犠牲者を出した。

BBCによると、現地を視察したメルケル首相(当時)は「被害の規模を言い表すにも、ドイツ語にはふさわしい言葉がないように思える。衝撃的だ」と感情をあらわにした。

その災害の記憶が冷めやらぬうちに総選挙を迎えたことで、環境対策で先んじる緑の党に票が集まった形だ。

さらに投票日直前の24日、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが「ドイツの二酸化炭素排出量は世界で4番目に多い」と批判した。ベルリンで開いたデモ「未来のための金曜日」の中での発言だ。これも選挙に影響したと見てよい。

メルケル元首相も解決できなかった「負の遺産」

2017年のメルケル首相再選直前、「メルケル首相はユーロ危機、エネルギー革命、難民への国境開放と、計画性のない政策を実施するという重大な過ちを3回犯した」(フランクフルター・アルゲマイネ紙)との批判が上がっていた。

こうした批判は今でも続き、CDUから緑の党に票が流れたとみられる。有権者の間では、このほか家賃の高騰に無策で、不動産業界を野放しにしたという批判もあった。

CDU支持者が、女性党首の「緑の党」に流れた

地元ヴェルト紙などによると、総選挙での敗北を受けて、CDUでは後継者のアルミン・ラシェット党首に辞任を促す声が高まった。選挙戦ではメルケル前首相の後継者指名が遅れたという批判もあった。

欧州では比較的、存在感が高い「緑の党」だが、日本やアジア、米国などでは国会や議会の議席を獲得できていない。世界的に「脱炭素」が進むなか、緑の党のグローバル戦略(グローバル・グリーンズ)も問われている。