■今さら聞けないサステナビリティ重要単語:紛争鉱物

スマートフォンやパソコンなどの電子部品に使う希少金属を含む鉱物の中には、紛争地域で採掘され武装勢力の武器購入や戦闘維持の資金源となっているものがあります。それが紛争を長引かせているとも言われている、「紛争鉱物(コンフリクト・ミネラル)」です。(オルタナS編集長=池田 真隆)

特に世界有数の鉱物資源の埋蔵量を誇るコンゴ民主共和国では、1996 年から 20 年以上にわたって武力紛争が続き、武装勢力が不法支配する鉱山では殺害、暴行、略奪が横行し、鉱物採掘を生業としてきた地域住民が苦しめられてきました。採掘現場では劣悪・危険な環境での労働や児童労働などの人権侵害が起きています。

採掘された鉱物は、複雑で不透明なルートを経て国外に売られています。そこで不安定な政情、脆弱な行政、汚職の蔓延などの問題を抱えるコンゴに対して、人権侵害の歯止め役として同国産の鉱物を取り扱う国や企業に大きな期待が寄せられていました。

2010 年、米国連邦議会はリーマンショックを受けて「金融規制改革法」(通称ドッド・フランク法)を可決しました。その第1502条は米国上場企業に対して、紛争鉱物としてコンゴと隣接9カ国産のスズ・タンタル・タングステン・金(略称3TG)および国務長官が指定する鉱物を製品に使用していないかどうか、米国証券取引委員会(SEC)への年次報告を義務付けました。

同条により米国上場企業は透明性の高い責任ある鉱物調達が求められ、自社のサプライチェーンにおける鉱物の流れを把握すること(トレーサビリティ)が必要となりました。その結果、米国上場企業と取り引きがある日本企業も紛争鉱物に関する情報開示が求められることから、一般社団法人電子情報技術産業協会は、2012 年に「責任ある鉱物調達検討会」を設置し、サプライチェーン全体を対象として取り組んでいます。

トランプ政権下の 2017 年 1 月にはSECがこの規制を見直すと発表しました。その理由は、規制対象国の産出であっても武装勢力と関わらない鉱物まで規制してしまうこと、武装勢力への抑止力効果が不明確などとされています。

他方、欧州連合(EU)も紛争鉱物規制に向けて大きく動いています。2017年7月には欧州理事会で承認されたことからEU法として発効し、2021 年1月から全面適用されます。

サプライチェーンにおける紛争鉱物の人権デューデリジェンスの義務付けという意味ではドッド・フランク法と同じですが、E U法では規制対象国を指定せず、「紛争地域及び高リスク地域」からEUに輸入される3TGだけを対象とします。

対象企業は紛争鉱物(鉱石・未加工金 属)を原料としてEUに輸入する精錬事業者や輸入事業者のみで部品や製品の状態で輸入し、最終製品をEUで製造・販売する川下企業も対象外ですが、今後3年ごとの見直しではこれら川下企業も対象となる可能性があります。

*参考:CSR検定2級テキスト(2021年版)