東京パラリンピックの開会式が8月24日20時から開かれる。NHKEテレでは、ろう者による手話通訳「ろう通訳」付きで放送される予定だ。東京オリンピックの閉会式(8月8日)でも、「ろう通訳」の技術や表現力に注目が集まっていた。聴者による手話通訳と、ろう通訳はどう違うのか。(オルタナ副編集長=吉田広子)

オリンピック閉会式の様子はNHKEテレで、ろう者による手話通訳付きで放送された

「手話」とは、手の形、位置、動きをもとに、表情も活用する独自の文法体系を持った、音声言語と対等な言語である。障害者権利条約の定義に手話が「言語」として位置付けられ、日本でも改正障害者基本法で初めて「言語(手話を含む)」と明記されたことで、手話が言語として法的に認知されている(出典:全日本ろうあ連盟ウェブサイト)。

「手話通訳」とは、音声言語と手話を通訳することだ。厚生労働大臣認定の手話通訳技能認定試験に合格すると、「手話通訳士」という資格を取得することができる。音声言語と手話を通訳する試験のため、手話通訳士は全員聴者だ。

言語の尊重はオリパラの多様性そのもの

オリンピックの閉会式で注目を集めた「ろう通訳」は、ろう者による手話通訳。まず話の内容を「フィーダー」と呼ばれる聴者の手話通訳者が通訳し、それをろう者が通訳するという協働作業だ。フィーダーとろう者ともに高い技術力とチームワークが必要だ。

ごく簡単に言えば、日本人が英訳し、それを英語ネイティブがブラッシュアップするようなイメージだ。

オリンピック閉会式では、瞬時にネイティブな手話表現に変換する、ろう通訳の的確な技術や豊かな表現力に賞賛の声があがった。ただし、聴者による手話通訳もろう通訳もどちらも必要で、協働していくことが重要だ。

ろうの家族がいる藤木和子弁護士は、オリンピック閉会式の手話通訳放送を受けて「情報を取得するだけであれば、字幕で事足りる人もいるが、手話を言語として尊重してもらえたことがうれしいという声が多かった。バンクーバーオリンピックでは、少数民族の言語を含めた22言語で放送されたと聞いている。言語の尊重は、オリンピック・パラリンピックが目指す『多様性』そのものである。ろう通訳の素晴らしさは、聞こえない人だけでなく、聞こえる人にも届いた」と振り返る。

オリンピック開会式では手話通訳が放送されず

一方で、オリンピック開会式の放送には手話通訳が付かなかったこと、各種団体からの要望を受けて、NHKはEテレで手話通訳付き放送の実施を決めたが、総合テレビでは放送しないことに対して、疑問の声もある。

こうした状況を打破しようと、NPO 法人インフォメーションギャップバスター(IGB)と手話推進議員連盟は、情報保障に関するアンケート調査を実施。オリンピック開閉会式放送における情報保障のあり方については、回答者2762人のうち71%が「総合テレビの放送に手話通訳をつける」ことを望んでいることが分かった。

IGBと手話推進議員連盟は8月20日、古川康・総務大臣政務官に、情報提供の面での「合理的配慮」を求める要望書を提出した。

具体的には、「国民的行事や緊急事態の会見などの放映に際しては、総合テレビにおいて手話通訳(ろう通訳)や文字通訳(字幕)を含めて放映すること」「総合テレビにおいては、すでに実施中の文字通訳(字幕)に加えて手話通訳を選択できるように、国際的アクセシビリティ規格をTV局やTVへの適用を推進すること」を要望している。