さわかみホールディングス 澤上篤人社長インタビュー

企業の短期的な業績ではなく、長期視点での投資を掲げる「さわかみ投信」の創業者・澤上篤人氏(74)は、最近の日本でも流行している「ESG投資」を「ファッションに過ぎない」と手厳しい。真のサステナブル投資とは何なのか。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)

さわかみホールディングスの澤上篤人社長

――ESG領域を重視したサステナブル投資が高まっていますが、投資する側にはどのような見識が求められると思いますか。

1970年代前半までは投資といえば「長期投資」が主流でした。例えば工場を建てるなら、土地を購入するまでに1~2年、建屋の建設に2年、機材の搬入に1年、それから人を雇って、技術指導をすることに数年かかります。

その間、金利は負担になるし、減価償却費も発生する。事業が立ち上がっても歩留まりが悪いことが多く、すぐに回収できるとは限りません。

つまり、投資の回収は最低10年単位で見ないといけなかった。10年というと、すでに製品寿命が終わっていたり、新製品が出ていたりしてもおかしくありません。ただ、そういう経営を応援するのが投資の醍醐味でした。実体経済から一歩も離れない投資こそ、健全な経済をつくるからです。

そして、この長期投資の際たるものが年金の運用でした。年金は給付するために、長い時間をかけてでも資産の最大化を図るものです。そのため、10~20年単位での投資を行っていました。

だが、この流れが70年代後半に変わりました。60年代に国民皆保険や企業年金などの制度ができ、70年代後半から年金の積立て額が加速し出すと、世界中の運用会社が年金に目を付けだしたのです。国民に給付するための年金が、世界最大の運用マネーとして踊り出てきたのです。

運用会社が年金資金の運用を求めて色めき立つと、世界の運用ビジネスが一気に、マーケティング主体のビジネスへと変わってしまいました。より短期で成果を出す会社が運用会社として選ばれるようになり、長期投資どころか、短期のディーリング主体に一変しました。投資運用(インベストマネジメント)から資金運用(マネーマネジメント)に様変わりしたのです。

世界の運用業界には、「とにかく短期的に成果を出せれば、どんな運用でも構わない」という考えが広がり、多くの運用会社が部分最適の追求に走り出し、全体最適の考えがなくなってしまいました。そこには、倫理観や社会正義は存在しないのです。

本来、投資は将来をつくっていくために行う行為です。年金も現役世代だけでなく、将来世代も含めた生活者のお金です。それなのに、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は米系の運用会社を選び、毎年の成績で一喜一憂している。「その時だけ良ければいい」という考えで投資しても、社会はよくなりません。

投資先だけに倫理観を求めていることがおかしいのです。運用する側もサステナビリティの意識を持たないといけない。それが、受託者責任(フィデューシャリー・デューティ)です。

――最近のサステナブル投資の動きをどう見ていますか。

SRI(社会的責任投資)もESG投資も「何を今さら」というのが率直な印象です。投資はそもそも長期投資だったのです。

だから私たちは、自分たちの倫理観や社会正義と照らし合わせて、その価値観に相反する会社には投資して来ませんでした。自分たちの世代だけでなく、子や孫の代の社会を繁栄させるか、実体経済に足を降ろして、投資先を選んできたのです。