■三井物産 松井 透・執行役員 エネルギー第一本部長兼エネルギーソリューション本部長インタビュー■

脱炭素/カーボンニュートラルに向けて、世界で「脱石炭」が加速している。電力の「安定供給」に取り組んできた三井物産はどう挑むのか。同社でエネルギー事業を総括する松井透・執行役員に戦略を聞いた。(聞き手=オルタナS編集長・池田真隆/写真=山口 勉)

気候変動問題の解決に向けて社内外の知見を結集して挑むと強調する松井・執行役員

需要に応えつつ再エネへ移行

――石炭関連事業からのダイベストメントを求める声は日に日に高まっています。三井物産は脱炭素化へのエネルギートランジションを掲げましたが、化石燃料の位置づけをどのように考えますか。

脱炭素を目指すためには世界が一体となって、地球温暖化や気候変動に取り組んでいかないといけません。ただ、一方で、世界中のエネルギーや燃料のすべてが突然、炭素を排出しないものにするのは現実的ではありません。「責任ある形」でトランジション(移行)を実現していくことが重要だと当社は考えます。

「責任ある形」とは、社会が必要とするエネルギーに関する当社の役割を放棄するのではなく、必要とされるエネルギー需要に応えるという当社の使命を果たしていきつつ、クリーンエネルギーに移行していくことを指します。

つまり、脱炭素に向けて移行していくなかで、「再生可能エネルギー」などの新たなエネルギー源が十分に活用できるまでの期間も、化石燃料などのエネルギー源を供給していかないといけません。

そうでないと、一般市民の生活が不自由になります。地域によってニーズが異なるので、「環境」と「経済」の両方をしっかりと考え、透明性のあるトランジションを果たし、現実解を提案していきたいと考えています。

――LNG(液化天然ガス)は石炭火力に比べてCO2の排出量はおよそ50%です。しかし、それでも化石燃料である限りはCO2は排出します。この点をどう考えていますか。

トランジションを目指す上で、LNG事業が担う役割は大きいと捉えています。特にアジアでは、石炭からガスへ、そして、その先にクリーンエネルギーがあると考えている国が多いです。

トランジションをしていく上では、LNG事業をコアビジネスとして、ポートフォリオを強化しながら取り組みます。

CCS/CCUS事業化目指す

――三井物産はCO2を回収して地下に埋める「CCS」(CO2の回収・貯留)や「CCUS」(CO2の回収・利用・貯蔵)事業にも取り組んでいます。CCS/CCUSの実現性をどう考えていますか。

CCSを実現するには、地下に関する高度な知見が求められます。当社は石油やガスの探鉱・開発・生産事業に取り組んできたので、この技術をCCSに利用できると考えています。

今年3月にはCCSを手掛ける英国の会社に出資して、10月には豪州西部でブルーアンモニア生産の事業化を見据えて、CCSに関する共同調査の実施を発表しました。

CCSについては、着手している英国や豪州だけでなく、LNG事業などでネットワークのある国への参入を目指しています。需要サイドが出てくる時期に合わせて、CCSを活用したブルー水素やブルーアンモニアの製造事業につなげていきます。 

加えて、地熱発電にも探鉱開発の技術を活かせます。グループ会社の三井石油開発(MOECO)を通じて、地熱発電を手掛けています。

LNG事業を当面のコアビジネスとして継続して、石油やガスの探鉱開発で培ってきた技術をCCSや地熱発電にも活用する。これが「責任ある形」として、エネルギーのトランジションに貢献するということです。

当社は、これまで日本並びに世界のエネルギーの安定供給に貢献してきた自負があります。今後も貢献していくためには、各地域におけるエネルギートランジションの方法に合わせながら取り組む必要があります。 各ニーズに応えられるような事業展開をしていくことが必要です。

脱炭素への移行は世界的に起きており、この動きをビジネスチャンスとして生かしていきたい。当社は、環境への配慮など定性面でも貢献していきますが、定量面でも価値を向上しないといけません。

環境NGOとも前向きに対話

――ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の文脈や、環境活動では、CCSに対する疑問や、そもそもダイベストメント(石炭・天然ガス事業からの投融資引き上げ)を求める声もあります。