■みんな電力×川崎ブレイブサンダース■
プロバスケットボールB.LEAGUE B1所属の「川崎ブレイブサンダース」は、SDGs(持続可能な開発目標)を推進するプロジェクト「&ONE」(アンドワン)を展開。2021年3月には、17目標すべてにチャレンジするイベント「&ONE days」(アンドワンデイズ)を行った。スポーツの力でSDGsにどう貢献していくのか、元沢伸夫・DeNA川崎ブレイブサンダース社長に聞いた。
――2018年7月に川崎ブレイブサンダースの運営を継承し、2020年9月にSDGsプロジェクト「&ONE」をスタートしました。どのような経緯で始められたのですか。
私たちは、バスケットボールやホームゲームを通じて、すべての人に「健康」と「働きがい」の機会を提供し、川崎をより「住んで幸せな街」にすること――を目指しています。
もともと、地域に愛され誇りとされるプロスポーツクラブになるためには、3つの柱が必要であると考えていました。まずは「強い」こと、次に「人気がある」こと、そして3つ目が「社会に貢献する」ということです。
1つ目と2つ目は当たり前のことですが、自分たちが社会にどう貢献できるのかを考えていた中で、SDGsに出合いました。
プロスポーツクラブとして、主体性を持って継続的にできる社会貢献とは何か。社内で議論を重ねていった結果、目標3「すべての人に健康と福祉を」と目標8「働きがいも経済成長も」に取り組むことで、「川崎を住んで幸せな街にする」(目標11)――という方向性が固まりました。
パラアーティストが選手の肖像画描く

――2021年3月には、SDGsの17目標すべてにチャレンジする「&ONE days」を開催されましたね。
2日間で17目標に関連する約20の企画を行いました。パートナーの皆さまのお力添えがなければ「&ONE days」は実現できなかったと思います。
企画の一つとして、14人のパラアーティストに選手13人とヘッドコーチの肖像画を描いていただきました。それを試合会場のセンターハングビジョンに掲出したところ会場は大盛り上がりで、練習中の選手も思わず見入っていました。練習に集中している選手が動きを止めるなんて、滅多にないことです。
――皆さん、心から嬉しかったのでしょうね。来場者の反応はいかがでしたか。

最寄駅の東急東横線武蔵小杉駅と試合会場の「とどろきアリーナ」の間で、ウォーキングスタンプラリーを行いました。通常、試合会場で入場時にお渡しするプログラムを、スタンプを押せる仕様にして駅でお配りし、とどろきアリーナまでの途中3カ所のポイントでスタンプを押す企画です。
歩いて30分の道のりにもかかわらず、100人以上が参加してくださり、景品として用意したタオルやステッカーがあっという間になくなるほどでした。好評を受けて、今シーズンからは全試合でウォーキングスタンプラリーを行っています。
みんな電力のご協力のもとで実施した、自転車発電を体験できるブースも子どもたちに人気でしたね。ほかにも、賞味期限が近づいた食品を集めて寄付するフードドライブや、こども食堂への寄付なども行いました。
「&ONE」のアドバイザーになっていただいている蟹江憲史・慶應義塾大学大学院教授から「17の目標はすべてつながっている」と教えていただいたのですが、「&ONE days」をやってみると本当にその通りで、改めてSDGsの奥深さを感じることができました。
ウォーキングスタンプラリーの狙いは歩いて健康になること(目標3)でしたが、自動車の使用を控えることで道路混雑の緩和(目標11)やCO2排出量削減(目標13)にもつながるのです。
ホームゲームはCO2排出ゼロで
――SDGsの目標7にもありますが、再生可能エネルギーへの切り替えも進めているそうですね。
みんな電力を通じて、2021年7月からホームゲームの全試合にカーボンオフセットの仕組みを導入し、クラブハウスの電力は再生可能エネルギー100%に切り替えました。
クラブハウスに電気を供給する神奈川県相模原市の太陽光発電所は、ネーミングライツを取得して「川崎ブレイブサンダース太陽光発電所」と名付けました。地域で生産された電力を地域で消費する「電力の地産地消」を実現することで、地域経済の活性化や再エネの拡大、SDGsに貢献したいと考えています。
また、2021年11月からはみんな電力より「川崎ブレイブサンダース電気」の販売を開始しました。こうした情報をファンの皆さまにも届けることで、気候変動問題や再エネについて知っていただき、SDGsに取り組むきっかけになればと思っています。
――SDGsに対する選手の意識も変わってきているのでしょうか。
大きく変わりました。SDGsのワークショップを開き、どのようにSDGsに取り組むかという案を選手から募ったところ、その場で10個以上アイデアが出てきたのです。
例えば、加入2年目の増田啓介選手は、試合会場で販売している弁当が余った場合に引き取って試合後の補食として食べることで、食品ロス削減に貢献する企画を考えました。選手は試合でものすごい量のエネルギーを消費するので、補食が大切なのです。早速実行に移し、本人に弁当を渡している動画をツイッターにアップしたところ、大きな反響がありました。
バスケ施設で子どもの居場所づくり

昨季まで7季連続でキャプテンを務め、チームを象徴する存在の篠山竜青選手には、3月に「&ONE」アンバサダーに就任してもらいました。これも決して強制したわけではなく、クラブとしてSDGsに力を入れていきたいという話をしていく中で、本人が快諾してくれました。
ここ1年で選手のSDGsに対する関心は高まっており、今では私たちが企画のヒントやアイデアをもらうことも少なくありません。
――SDGsが取り上げている課題は深刻なものですが、それを楽しくかっこ良く伝えられるのは、まさにスポーツの力ですね。
「スポーツ×SDGs」は相性が良いです。選手が発するメッセージには力がありますし、SDGsの取り組みを通じてプロスポーツクラブはいろいろな形でパートナーシップ(協働)を組めるので、幅広いアクションが可能です。
2021年11月には、東急武蔵小杉駅の高架下に「THE LIGHT HOUSE KAWASAKI BRAVE THUNDERS」(呼称:ザ・ライトハウス)というバスケットボールを気軽に楽しめる施設をオープンしました。漫画やプログラミングも楽しめる施設となっており、バスケ振興だけではなく、子どもたちに家庭や学校とは異なる「居場所をつくりたい」と始めた企画です。
高校生以下は無料で利用できます。川崎ブレイブサンダースやNBA(北米リーグ)の試合映像も放映されています。
SDGsに取り組むことで、それまで出会えなかった皆さまとのつながりが広がっています。パートナーシップこそがSDGsの真髄なのだと、つくづく感じています。
●元沢伸夫(もとざわ・のぶお)
株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース代表取締役社長。2006年、株式会社ディー・エヌ・エー入社。社長室で新規事業などに従事し、ビジネス開発部部長などを経て、2014年に株式会社横浜DeNAベイスターズ執行役員事業本部本部長に就任。2018年1月から現職。
【みんな電力から「UPDATER」へ】
みんな電力株式会社は2021年10月1日、「株式会社UPDATER」(アップデーター)に社名変更しました。「みんな電力」は、電力事業におけるサービス名称として引き続き使用します。電力だけではなく、空気、バッテリーなどのトレーサビリティ実現や、モノのルーツをたどるオウンドメディア運営など事業の多角化に取り組み、「顔の見えるライフスタイル」全般を提案していきます。
(PR)(オルタナ67号から転載)