サラヤ「ヤシノミ洗剤」

「世界の『衛生』『環境』『健康』に貢献する」ことを理念に掲げ、グローバルで事業を展開するサラヤ(大阪市)。1952年の創業以来、一貫して社会課題を解決する事業を手掛けてきた。その代表的商品が2021年で50周年を迎えた「ヤシノミ洗剤」だ。生産過程のサステナビリティ(持続可能性)に加え、寄付の仕組みで消費者の巻き込みも図る。

50周年を迎えた「ヤシノミ洗剤」(撮影:川畑嘉文)

サラヤの代表的商品である「ヤシノミ洗剤」は1971年に誕生した。当時主流だった石油系合成洗剤による河川や湖沼の汚染が社会問題となっていたころだ。「食器をきれいにする洗剤で、地球を汚すのは間違っている」という創業者の思いから、生分解性が高く、手肌に優しい植物系洗剤の先駆けとして、ヤシノミ洗剤が生まれた。

50年変えない、3つのこだわり

当初は業務用からの展開だったが、給食センター職員の間で「手が荒れなくていい」と評判となり、「家でも使いたい」という声に応え、1979年に一般家庭用のヤシノミ洗剤を発売した。

50年続くロングセラー商品となったいまも「手肌と地球にやさしい」というコンセプトは変わらず、発売当初から次の3つにこだわってきた。

1)ヤシの実由来の洗浄成分
2)無香料・無着色
3) 排水後は素早く分解されて地球に還ること

「『環境に良い』ことが、商品の価値として評価されるまで、長い年月がかかりました。しかし、ぶれずにやってきたからこそ、50年も続くブランドになった。競争が激しく、変化の早い洗剤業界では珍しいこと。近年の環境意識の高まりとともに、『ヤシノミ洗剤』の価値が認められるようになっていった」(廣岡竜也・サラヤ広報宣伝統括部長)

一方で、時代の変化に合わせて変えてきたものもある。それは、使いやすさや環境配慮にこだわったデザインだ。

1981年に誕生したポンプ式ボトルは、食器洗い中に注ぎ足ししやすいように、ノズルの角度にまでこだわった。ヤシノミ洗剤の洗浄成分濃度は、手肌と環境への負担を考えた「16%」。汚れ具合や洗い物の量に応じて注ぎ足し、洗剤の使い過ぎを防ぐためだ。

1982年には食器用洗剤では日本初となる「詰め替えパック」を発売した。

「使い終わったら捨てられる容器は、石油資源のムダ使いになり、プラごみも増える。これを解決しようと生まれたのが『詰め替えパック』。さらに、詰め替えて長く使ってもらえるように、ボトルのデザインも見直した」(廣岡部長)

そうして1993年に誕生したのが、ステンドグラス風ボトルだ。ブランド名を小さくするなど商業色を極力排除して、透明感が引き立つデザインに一新した。

テレビ報道で原料調達見直す

一貫して「手肌と地球にやさしい」ことにこだわってきた同社だったが、2004年8月、思わぬ出来事が起きた。

あるテレビ番組が「洗剤の原料となるパーム油生産のため、ボルネオではアブラヤシ農園が拡大し、ゾウが絶滅の危機に瀕している」として、サラヤにコメントを求めてきた。そのネガティブな内容に他社が取材を断るなか、同社は取材を受けることを決めた。その結果、番組放送後、「ヤシノミ洗剤が原因」という誤解が広まってしまった。

「番組では、実態を『知らなかった』という部分だけが放送され、『問題改善に取り組む』というメッセージがカットされた。しかし、実態を真摯に受け止め、現地視察を開始した」(廣岡部長)

ボルネオでは、世界で急速に高まるパーム油需要に応えるため、大規模なプランテーション開発が進み、熱帯雨林は大幅に減少。多くの動植物の絶滅危機を招いていた。

さらに生産されたパーム油の85%は「食用」で、チョコやスナック菓子などに使用されている。残りの15%は「非食用」で、石けんや洗剤に使われるのはそのうち数%。大手メーカーがほとんどを占めるなか、サラヤの使用量はごくわずかということが分かった。

日本のパーム油の用途別消費量

それでも「パーム油を使う企業として責任がある」という思いから、サラヤはボルネオの生物多様性を守るプロジェクトを立ち上げた。

廣岡部長は、「サラヤがパーム油の使用を止めても、ボルネオの問題は解決しない。重要な産業であり、現地の人々の生活もある。持続可能なパーム油の生産を働きかけ、環境や生物多様性を守っていくことが当社の責任ではないかと考えた」と振り返る。

サラヤは日本に籍を置く企業として初めて2005年1月にRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に加盟し、現在はすべての自社製品(国内販売)で、RSPO認証を取得している。

売り上げの1%、ボルネオ保全に

サラヤは野生動物の救出も支援している。写真は更家悠介社長

こうしたサラヤの取り組みは、消費者の意識も変えてきた。ボルネオの実態を日本の消費者に発信するとともに、対象商品を購入すると、売り上げの1%がボルネオの生物多様性保全プロジェクトに寄付される仕組みも整えた。対象は「ヤシノミ洗剤」をはじめとするパーム油利用製品だ。

「誰一人取り残さない」というスローガンのもと、2030年までに達成すべき目標を定めたSDGs(持続可能な開発目標)。目標12「つくる責任つかう責任」では、企業にサステナブルな方法で製品やサービスを生産することを求めるとともに、消費者にも持続可能な消費を呼び掛けている。

「事業を通じて社会課題を解決するということが、サラヤのアイデンティティ。100%サステナブルであることは難しいが、10%を10個積み重ねて、少しずつできることを増やしていく。持続可能な原料調達を行いながら、商品を通じて消費者と共に社会課題の解決を目指していきたい」(廣岡部長)

(PR)(オルタナ67号から転載)