コロナ禍で社会課題が顕在化し、NPOの存在感が高まっている。寄付先はNPOに限らないものの、「寄付白書2021」によると、個人による寄付総額は2016年に比べ1.5倍となる1兆2126億円に上った。日本では、NPOへの信頼度が、政府やメディアよりも高いという調査結果もある。(オルタナ副編集長=吉田広子)
「NPO」は「Non-Profit Organization」の略で、非営利組織を意味するが、日本では、特定非営利活動(NPO)法人として認証を受けた団体の呼称として使われる場合が多い。法人格を持つNPOは、5万団体以上に上る(2021年2月現在)。
しかし、NPO法人に関する世論調査(2018年、内閣府)によると、NPO法人について「言葉だけは知っている」が67.5%で、「よく知っている」は21.7%にとどまる。NPOは行政サービスが行き届かない社会課題の解決の担い手として期待されている一方で、「NPOはあやしい」「非営利組織なので、利益は出さずボランティアで運営すべき」といった誤解も多い。
では、どのようにNPOの信頼を高めていけるのか。
NPOの信頼に関する調査研究やガバナンス評価を行う非営利組織評価センター(JCNE、東京・港)は1月21日、NPOの信頼をテーマにしたオンラインシンポジウムを開催した。
JCNEの山田泰久業務執行理事は「NPOの『信頼』とは、NPOに対する『期待』と『安心』ともいえる」と話す。
「支援者は、解決したい課題に貢献できるNPOを応援したいと考えるし、お金を扱うので運営に対する安心感も重要だ。『期待』と『安心』を『可視化』することが、NPOの信頼性を高め、企業をはじめ他セクターとの連携を深めることにつながるのではないか。JCNEは、NPOのガバナンス評価を行うことで、その後押しをしていきたい」(山田・JCNE業務執行理事)
企業からの支援実績がNPOの信頼性を高める
「企業と協働することで、NPOの信頼も高まっていく」と話すのは、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(東京・新宿)の三島理恵広報・ファンドレイジング統括責任者だ。
むすびえは、全国にあるこども食堂の中間支援組織で、イオンと連携し「イオンこども食堂応援団」を展開している。
三島さんは「こども食堂と聞くと、『子どもの貧困』を思い浮かべるかもしれないが、それだけではなく、みんなの居場所づくりや地域づくりにつながる取り組み。イオンのような大企業と協働することで、NPOの信頼性も高まっていく。それが活動や社会課題への正しい理解にもつながる」と話す。
長年NPOとの協働を進めてきた日本マイクロソフトの龍治玲奈政策渉外・法務本部社会貢献担当部長は、「女性や非正規雇用者、在留外国人など、コロナで大きな打撃を受けた人が多い」と話し、認定NPO法人育て上げネット(東京都立川市)や認定NPO法人難民支援協会(東京・千代田)などと連携し、就労支援に取り組んでいるという。
「企業は社会課題に対しての専門性がないので、現状をよく知り、解決の仕組みを持つNPOに期待している。私たち企業もテクノロジーや社員など、自社のリソースを生かしながら、コレクティブインパクト(集合的な成果)で課題に貢献していきたい」(龍治・日本マイクロソフト部社会貢献担当部長)
実は、NPOへの信頼度は、政府やメディアよりも高いという調査結果もある。世界最大のPR会社エデルマンは20年前から、日本をはじめ世界約30カ国で、「NPO/NGO」「企業」「政府」「メディア」に対する信頼度調査「トラストバロメーター」を実施。2021年の調査結果によると、NPOへの信頼度スコアは「40」で、企業の「46」よりも低いが、政府の「37」、メディアの「36」よりも高い。
NPOの組織マネジメントを底上げする取り組みも出てきた。例えば、トヨタ財団は、助成金を拠出するだけでなく、NPOに問題解決力を身に付けてもらうことを目的に、2016年から「トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」を開催。トヨタ自動車で品質管理に取り組んできた講師が、NPOに問題解決手法を伝授している。
コロナ禍で社会課題が顕在化するなか、NPOへの期待はますます高まりそうだ。