近年、盛り上がりをみせているフェミニズム。その盛り上がりは、日本だけでなく世界中で起きており、なかでもフェミニズムの流れを受けた韓国の書籍や映画は、日本でも多くの支持をあつめている。今回は、韓国でいま起きているフェミニズムがうまれた社会的背景や、日本との共通点と相違点などについて考察していく。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

「韓国フェミニズム文学」はなぜ日本でヒットしたのか

『82年生まれ、キム・ジヨン』は韓国でベストセラー小説となり、発行部数は130万部を突破。日本でも翻訳小説としては異例の20万部を超え、映画版も上映された。他にも『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』『私は自分のパイを求めるだけであって人類を救いにきたわけじゃない』など、さまざまな書籍が日本語訳されている。

さまざまなメディアでも、韓国フェミニズム文学やドラマの特集が組まれるようになり、韓国フェミニズムは、かつてないほど身近な存在になってきている。

なぜ、わたしたちは韓国フェミニズム文学に魅せられるのか。作中の登場人物が抱える女性の生きづらさや挫折感。そこには、日本の女性も共感するものが多く描かれている。

『82年生まれ、キム・ジヨン』でも、炊き立てのご飯が出されるのは父、弟が最初で女性である自分は最後。夜道で怖い思いをしたのにスカートが短いからだ、自分の立ち振る舞いが悪いからだと叱られる。就職活動での不公平な扱い。そして出産によるキャリアの断絶。これは日本に住むわたしたちにとっても見覚えのある光景ではないだろうか。

儒教の影響を受け、家父長制が残る韓国の家族や社会は、日本のそれと共通するところも多い。1982年韓国で生まれた女の子で一番多い名前「キム・ジヨン」の物語は、日本で暮らすわたしたちの物語でもあるのだ。家庭でも社会でも根強く残る男性優位。そこへ文学というカタチで声を上げはじめた韓国フェミニズム文学に多くの女性たちは勇気づけられているのだ。

韓国フェミニズムの盛り上がりの背景にあるものは

2016年、ソウル江南駅付近にあるトイレで20代の女性が見ず知らずの男性に殺害された。逮捕後「女性達が自分を無視するからやった」と供述したことから、これは女性嫌悪による犯罪だとされ、SNSを中心に追悼する動きが広がった。

殺されたのは、女性である自分だったかもしれないという意味で「#私は偶然生き残った」というハッシュタグが拡散。さらにツイッターの呼びかけで事件現場から一番近い江南駅10番出口には、被害女性の追悼メッセージが書き込まれた、数百枚のポストイットが溢れた。

この「江南事件」をきっかけに韓国の女性達は沈黙を破り、SNSを中心に連帯し女性嫌悪や差別に対し声をあげ、行動を起こすようになった。#MeToo運動、堕胎罪廃止デモ、そして「女性議党」の発足と、フェミニズムのムーブメントは広がりをみせている。

日本でも、性犯罪をめぐる相次ぐ無罪判決をきっかけにはじまったフラワーデモや、職場で女性がハイヒールやパンプスの着用を義務づけられていることに抗議する「#KuToo」など、女性達が声をあげはじめているが、韓国のフェミニズムによる運動はそれ以上に広がっている印象を受ける。

これには韓国の歴史的背景が関係している。1980年代の軍事政権下の抗争など、国民は常に何かと戦わなければいけない歴史があった。その精神は今も引き継がれており、2016年、朴槿恵大統領の退陣を求め、デモ参加者がろうそくを持って集まった「キャンドル革命」では、子どもや若者も含め1700万もの人が参加した。そして同大統領はついに弾劾訴追へと追い込まれ失職をすることとなる。一般市民の行動が世の中を変えたという体験が、社会に対して声をあげる意識の下支えになっているのだ。

フェミニズムブームの先にあるもの

改めて、両国のジェンダー平等の現在地をみてみると、2021年のジェンダーギャップ指数において韓国は156か国中102位。日本は120位で先進国の中で最低レベルという結果だ。

日本は特に「経済」と「政治」の分野での順位が低く、「政治」の順位は147位と大きく遅れをとっている。韓国ではすでに女性大統領が誕生したが、日本で女性の総理大臣が誕生するのはいつになるのだろうか。

歴史上何度も盛り上がりを見せてきたフェミニズム。そのたびに勝ち取ったものと、変えられなかったものがあった。いま起きているフェミニズムのブームがどうか最期のブームになって欲しい。

ブームという一時的な盛り上がりではなく、男女平等の社会が実現し、フェミニズムという言葉がもう必要なくなる。そんな未来がはやく訪れることを願わずにはいられない。