がんに罹患し不安な気持ちを抱えながら、インターネットで情報を得ようとする人は多いだろう。インターネットはその手軽さというメリットと裏腹に、エビデンスに基づく正しい情報だけではなく根拠のない民間療法、食事療法も大量に紛れ込むという大きなデメリットがある。
不安や誤解から民間療法を選択してしまうことで、適切な治療へのアクセスができず病状が進行してしまうことが懸念される。がん治療を行う患者の栄養状態を良好に保つことは重要ではあるが、食事やいわゆる健康食品でがんを治癒させることはできない。
何を食べればよいのか?と不安に思う患者や家族は多いと思うが、まずは治療継続できる体力を維持するためにカロリーとたんぱく質、ビタミン、ミネラルが不足しないようバランスよく食べる、できる限り食事を楽しめる環境をつくることが重要であり、「がんに効く○○」という情報は無視して頂きたい。
標準治療は”平均的な”治療ではない
がん治療は、「標準治療」と呼ばれる治療のガイドラインに基づき選択される。“標準”という単語から、平均や並など中間的なイメージを持つ方もいるかもしれない。しかし、「標準治療」とは、科学的根拠に基づいた観点で、現時点で効果と安全性が確立された最も適切な治療を意味する。
がんの治療方法は、「手術(外科治療)」「放射線治療」「薬物療法」に大別され、がんの種類や進行度(ステージ)に応じて、それぞれを単独、または組み合わせて実施される。がん治療においては、「高額な医療」「先進医療」が必ずしも有効性・安全性を担保しているわけではない。
新しい治療法の一つである免疫療法※6も、保険診療で受けることができる「免疫チェックポイント阻害薬」を除き、効果が証明されていない。したがって、治療選択に際しては、ネット情報に惑わされず主治医やがん相談支援センタースタッフなどと共に十分な検討を重ねて欲しい。
ガイドラインが確立されていても、主治医による診断や治療提案に不安や迷いを抱きセカンドオピニオンを求める患者は少なくない。不安や迷いの背景には、医師とのコミュニケーション不足や、治療と同等に優先させたいことがあるなど患者個々の事情も存在する。
いずれにせよ、セカンドオピニオンは納得して治療を選択するための仕組みであるので、必要に応じて利用するべきである。セカンドオピニオンは、がん診療連携拠点病院のセカンドオピニオン外来などで受診または紹介してもらうことができる。受診の際は紹介状(診療情報提供書)やこれまでの検査データが必要となる。
(セカンドオピニオンを受ける場合の流れや留意点などの詳細は、がん情報サービスに掲載。https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/second_opinion.html)
※1映画「がんになる前に知っておくこと」公式サイト
http://ganninarumaeni.com/
※2ピアサポーター
障害や疾病などの経験をもち、それらの経験を活かしながら、対人援助の現場などで働き、障害や疾病をもつ仲間(ピア)のために支援やサービスを提供する人(マイナビコメディカル/セラピストプラスより抜粋)
https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/career/upskilling/7965/
※3緩和ケア
不安や悲しみなどに対する精神的なケア、痛みや副作用などを和らげるケアなど、がんと診断されてから始まるケアのことを指す。過去には積極的な治療を終えたがん終末期に行われたが、現在は治療と並行して精神的、身体的な痛みを和らげるケアとして提供されている。
参照:https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/relaxation/index.html
※4「国立がん研究センター病院/がん情報サービス」トップページhttps://ganjoho.jp/public/index.html
※5がん診療連携拠点病院
専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の整備、患者・住民への相談支援や情報提供などの役割を担う病院として、国が定める指定要件を踏まえて都道府県知事が推薦したものについて、厚生労働大臣が適当と認め、指定した病院。がん診療連携拠点病院には、各都道府県で中心的役割を果たす「都道府県がん診療連携拠点病院」と、都道府県内の各地域(2次医療圏)で中心的役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」がある。
※6免疫療法
免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)ことなどにより、免疫本来の力を利用してがんを攻撃する治療法を「免疫療法」という。