ロシアによるウクライナ侵攻で企業の危機管理担当者は頭を悩ましている。3月2日、企業の危機管理担当者ら52人がオンラインで話し合う会合が開かれた。この会合は1時間以上に及んだが、「世界中に経験者が不在」「何をどうしたらよいのか分からない」「ロシア人とウクライナ人の社員が一緒に働いている事業所もある」など様々な意見が出た。(オルタナS編集長=池田 真隆)

この会合を開いたのは、一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)。持続可能な成長を目指す世界的な組織である国連グローバル・コンパクトの「日本支部」として2003年にできた団体だ。GCNJの会員数は457社・団体(2022年2月)にのぼる。

気候変動や人権などをテーマに複数の分科会を持っており、今回はDRR(防災・減災)分科会を開いた。同会は企業の事業継続力の強化を目的に、情報交換や協働学習する活動を年に7回ほど行っている。

近年、気候変動による異常気象の激化で、風水害が増加傾向にあるため、DRR分科会の会員数は増え、現在は96社151人が参加している。会員の多くは、企業の危機管理担当者だ。

2日に開いた会合には52人が参加し、ロシアのウクライナ侵略による企業への影響や対応について話し合った。

ウクライナ侵攻の危機対応について話し合うのは今回が初めて。会員企業の業種や業界が異なるので、分野を特定しないでそれぞれの会員企業が抱えるリスクについて情報交換を行った。

2時間に及ぶ会合で出した主な結論は下記の通り。

・企業の危機管理担当者は、世界のどこかで起こっていることに常に敏感でいなければならない時代に入ってきたと認識すべき。
・現在、経済はグローバルにつながっているため、当事国で事業をしていなくても、必ず自分たちにも影響が及んでくると思い、リスクを考えて、備える必要がある。
・今回の件については、世界中に経験者が不在。頼りになるセキュリティのコンサルタントもいない。このような状況で役に立つことは、自社の分野のリスクに敏感な危機管理担当者が集まって情報共有すること。

GCNJでは、危機管理の見通しがつくまで、DRR分科会を定期的に開いていく考えだ。

DRR分科会で出た意見:
① 今回のケースでは、何をどうしてよいのか分からない。
② 使える情報源としては、International SOS や News Picks のうち有料会員情報。
③ 出張者のコントロールについては、International SOS など治安に関する有料情報を参考にして行うことで、それほど難しくはなかった。しかし、現地に在住の社員については、日本人、外国人を問わず、判断・指示が非常に困難である。
④ 事業継続は企業にとって重要であるが、生命の方が重要である。
⑤ 企業としては社員を、ロシア人、ウクライナ人を問わず、平等に扱う必要がある。
⑥ 欧州にある事業所では、ロシア人とウクライナ人の社員が一緒に働いているケースもある。
⑦ 原材料の安定確保が最重要課題。
⑧ カントリーリスクについてはほとんど考えていなかったが、今後考える必要性を感じており、これがきっかけとなるだろう。
⑨ ロシアの SWIFT 排除は、現在は全銀行ではないので、対象銀行が広がった時にさらに大きな影響が双方に来るだろう。
⑩ 銀行の破綻の可能性もグローバルに大きなリスク。
⑪ 中国も制裁対象になると、非常に大きな影響になる。
⑫ 円とドルは地政学面からは、今のところは比較的安全な通貨。
⑬ 数年前に、起こったことのないリスク、起こったら困るリスクなどの、それらが起こったらどのように対応するか、を検討したことがあったが、それは少し役立った。
⑭ 総務系の危機管理担当者、物流担当者、サイバー対応の IT 担当者など、横断的なチームを作って、対応方法を検討している。
⑮ 色々な情報をとることは必要だが、不正確な情報も多い。危機担当者は情報に惑わされないようにしなければ。
⑯ 不正確な情報が多い中で、迅速に判断し実行しなければならない点は、災害対応と共通している。
⑰ 医療系などの人命にかかわる事業をしている企業は、ロシアが制裁国だからといって、また SWIFT 排除で集金が困難となっても、人命に影響を与えることになるため、事業を停止することは難しい。
⑱ 2017 年頃に北朝鮮のミサイル問題が発生した際に、戦争についての対応策を検討したことがあったが、そんなことが起こるはずはないとさっぱり忘れていた。危機管理担当としては、どんなことでも起こりうると常に思うべき。