ニュージーランドのオークランド大学などの研究者らはこのほど、新型コロナ用の個人防護服(PPE)をリユースする方法を開発した。「乾熱滅菌」という手法を使い、ウイルスを不活性化する。このシステムは、輸送用コンテナでどこにでも運べる。新型コロナがまん延してからすでに8万7000トン以上のPPEが世界中に出回り、ほとんどが使用後に廃棄処分されたとみられる。WHOも医療廃棄物管理に対しての緊急行動を各国に促している。(NZニュープリマス=クローディアー真理)

医療関係者にはなくてはならない防護服

オークランド大学のイボンヌ・アンダーソン博士が中心となり、国内三大学と一研究施設、カナダの一大学が開発したシステムは、PPEに乾熱滅菌を施し、リユースを実現する。乾熱滅菌とは、加熱による滅菌方法だ。65度で30分間、乾熱滅菌を行ったところ、新型コロナウイルスを完全に不活性化することに成功した。プロトタイプの装置でも結果は同じだった。

乾熱滅菌を行うプロトタイプの装置© The University of Auckland Waipapa Taumata Rau


乾熱処理は新型コロナウイルスだけでなく、医療施設で見られる、そのほかの病気を引き起こす細菌に有効なことも確認済みだ。着用者のためにPPEに施されている保護加工が、乾熱処理で損なわれることもなかった。

乾熱処理システムは移動できるので、PPEの数が不足しているところ、どこへでも運び、役立てることができる。

オークランド大学化学工学部のサイード・バルーティアン准教授© The University of Auckland Waipapa Taumata Rau
オークランド大学化学工学部のサイード・バルーティアン准教授© The University of Auckland Waipapa Taumata Rau

一方、オークランド大学化学工学部のサイード・バルーティアン准教授らは、リサイクルできないPPEを廃棄せず、有用なものに変換するための試験を行った。PPEを粉砕し、小型の試作機で高温高圧の水と圧縮空気を当てると、最終的に水と酢酸が生成された。どちらも不活性で安全だ。

化学薬品を用いないこの方法をとれば、副産物として出るのは酸素と低濃度の二酸化炭素のみ。これらは安全に排出可能だという。生成された酢酸は消毒などに利用、水はこの処理を繰り返し行うために再利用できる。

コスト面でも、滅菌処理を施し、埋め立てるという従来の廃棄方法と、ほぼ同じ費用でPPE廃棄物を処理できることが明らかになっている。

アンダーソン博士ら、バルーティアン准教授らが各々行った処理技術の両方を平行して用いれば、使い捨てPPEに対するサーキュラー・ソリューションが実現したことになる。
世界保健機関(WHO)は、増加するコロナ関連の医療廃棄物の管理・処理システムの改善が急務だとする報告書を発表している。2つの処理技術は、報告書中、「人間と環境の健康を脅かす」と書かれている医療廃棄物の大量排出問題への解決策になり得ると期待されている。