主導者なき林業制度、誰が分配を担うのか

林野庁の「森林・林業統計要覧」には、スギの山元立木(やまもとりゅうぼく)価格、つまり山に生えている木の値段と、伐って運び出した丸太価格、そして製材した製材品価格の戦後の推移を示すグラフがある。(森林ジャーナリスト・田中 敦夫)

主導者なき林業は収奪型林業に

もっとも古い1955年で、製材品は約1万4000円、丸太が8000円、山元が5000円ぐらいか。その後、全体に価格は上昇していき、80年ぐらいには製材品が7万円に達する。ただ、丸太はその5割前後、山元は3割前後という割合はそんなに変わらない。

だが、その後徐々に差は開いていく。とくに丸太と山元の価格下落が激しい。製材品の値段も一時落ちたが、2010年を境に上昇に転じて、15年前後には約6万円までもどった。ところが丸太と山元の価格は下がり続けている。

現在の丸太価格は、製材品の2割、山元価格は製材品の4%である。これは何を意味するのか。木を60年程度育ててきた山主の受け取る利益が、約40年前の8分の1になったということだ。

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田中 淳夫(森林ジャーナリスト)

森林ジャーナリスト。1959年生まれ。主に森林・林業・山村をテーマに執筆活動を続ける。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)『鹿と日本人』(築地書館)『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(ともに新泉社)『獣害列島』(イースト新書)などがある。

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キーワード: #SDGs#林業

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