雑誌オルタナ68号(3月31日発売)の先出し記事です。68号では「戦争と平和と資本主義」をテーマに9人の有識者に寄稿頂きました。68号に掲載した記事をオンラインでも掲載します。

国際政治が不安定さを増すなか、脱炭素社会をつくることはレジリエントな社会づくりにつながる。エネルギー問題に詳しい高村ゆかり・東大教授はそのための重要戦略として、「分散化」と「内部化」を挙げた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

高村 ゆかり
東京大学未来ビジョン研究センター教
授。京都大学法学部卒業、一橋大学大学院
法学研究科博士課程単位取得退学。名古
屋大学大学院教授などを経て現職。研究
対象は国際環境条約に関する法的問題や
気候変動とエネルギーに関する法政策。

世界的にエネルギー価格の高騰が起きていますが、過去をさかのぼると数年に1度は起きていました。化石燃料から手を引くことでリアクションとして、市場価格が上がることはあるのです。

繰り返し起きてきたことを考えると、次の危機に備えるにはエネルギーの内製化を進めることがレジリエントな社会づくりへとつながります。再生可能エネルギーの自給率を増やし、需要構造の効率性を高めることは日本にとって損のない政策と言えます。その結果、地球温暖化の防止にも役立ちます。

そうした視点で新しい資本主義を考えると、これまでの資本主義のあり方を構造的に変えない限り実現できません。つまり、気候変動や格差などの諸課題はいまの資本主義経済の中から生まれた問題なので、そのような社会の負の部分を内部化していくことが新しい資本主義には求められています。

大都市の「脆弱性」災害時に浮彫に

エネルギーシステムを見直すことは新しい資本主義をつくることに貢献します。エネルギー問題のポイントは資源をどこから調達するかです。日本は資源を輸入に依存した中央集権型のシステムをつくってきましたが、有事にその脆弱さが際立ちました。ウクライナに侵攻したロシアに対する欧州諸国の対応の仕方を見ても、エネルギー資源を他国に頼ることの危険性が改めて可視化されました。

レジリエントな社会、さらには都市と地方の格差解消にもつながる仕組みとして、再生可能エネルギーを活用した分散型のシステムにしていくことが必要なのです。資源が豊富な地域の特性を活かして電気をつくり、その地域で産業をおこし、人口流出を防ぎます。

再エネではエネルギー需要以上の供給ができない大都市が地方でつくった電気をもらうことも一つの有効な方法ですが、本来はエネルギー資源がある場所に企業が移転していくことが理想です。

都市も地方と連携するなら、電気を依存するばかりではなく、都市自身も省エネに努めることが必要で、そのようなお互いで取り組みを行わないとバランスを欠いた連携になってしまい都市と地方の格差解消になりません。