■高村ゆかり・東大未来ビジョン研究センター教授インタビュー■

EU(欧州連合)が2026年から導入を検討している「国境炭素税」を、日本や日本企業はどう捉えるべきか。気候変動とエネルギー問題に詳しい高村ゆかり・東京大学未来ビジョン研究センター教授に聞いた。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)

高村ゆかり・東京大学未来ビジョン研究センター教授

――欧州委員会は7月14日、「国境炭素調整メカニズム」(国境炭素税)の導入概要を発表しました。この制度はどのような経緯から生まれたのでしょうか。

脱炭素を巡る議論は、以前から、製品の製造だけでなく「消費ベース」でも考えるべきという主張がありました。実際、中国や途上国では多くの製品を製造していますが、その製品を消費しているのは先進国です。

今回の「国境炭素調整措置(カーボン・ボーダー・アジャストメント・メカニズム(CBAM)=国境炭素税)」もこの議論から生まれました。これはEU域内だけでなく、域外も含めたグローバル規模で温室効果ガスを削減することが狙いです。

――EU域内の事業者と域外の事業者とで、気候変動対策の差によって生じる競走上の不公平を是正するための制度でもありますね。

EUは国境炭素税を検討する前から、鉄鋼など一部のCO2排出量の多いセクターに対して産業競争力上の配慮が必要だとして、一定の緩和策を取ってきました。

EU域内の排出量取引制度では、事業者は排出枠を入札で獲得しますが、鉄鋼などの大排出セクターに関しては無償で割り当てています。

しかし、国境炭素税を導入することで、この無償の割り当てを無くしていく方針です。

EU域外との競争上の懸念に応えつつ、炭素排出のコストを明確にすることで、大排出セクターに対しても、新しい技術の開発・導入や産業構造の転換を促します。国境炭素税はそうした政策の一環でもあるのです。