この4月から施行が始まったいくつかの法律、そのひとつに育児・介護休業法の改正がある。男性が育児休業を取得しやすいように企業側の雇用環境の整備を義務づけるものだが、この法律の改正にNPOの提言が関わっている。(非営利組織評価センター=村上佳央)

男性育休「賛成派」の声を届ける

該当の政策が定まる直前の2020年9月30日、ネガティブなニュース「男性育休、7割が「義務化反対」」が発表され、労政審でも反対の声が上がるなど、中小企業の負担増が懸念されていた。

そんな中、カウンターとなる賛成派のメッセージを翌日(同年10月1日)に発信し、最後のひと押しとなったのがNPO・企業等から成る男性育休義務化プロジェクトチームである。

プロジェクトチームには男性育休・産休を提言し続けてきた認定NPO法人フローレンス、企業の働き方改革を取り組んできた株式会社ワーク・ライフバランスなど5団体が参画。共同で男性育休義務化に関する提言「『男性の育休義務化』に賛成します」と発表することで、賛成派の市民や企業の声を代弁する形となった。

「総合的な探究」高校の新カリキュラムに

NPOが先行事例として長年取り組んできた事業が全国的な制度に反映されることがある。2022年度から高等学校で新たなカリキュラム「総合的な探究の時間」がはじまった。小中学校での総合学習をさらに発展させて、自らの興味や関心があるテーマに主体性を持って取り組むことを重視する。

文部科学省 『総合的な探究の時間編』高等学校学習指導要領から

この身近なテーマ設定が生徒の自己肯定感の向上につながると訴えてきたのが認定NPO法人カタリバである。2013年からこの実践型探究学習プログラム「マイプロジェクト」を立ち上げ、全国の高校生に機会を広げてきた。

現在、代表の今村氏は文科省の中央教育審議会委員を務め、カタリバは「総合的な探究の時間」を実施する高校への教材提供やカリキュラムマネジメントなどの普及支援を行っている。

生活困窮者支援「制度のすき間」を明らかに

既存制度の「使いづらさ」を指摘することもNPOの役割のひとつだ。生活困窮者支援を行う認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい(通称もやい)は、公助の拡大を目指し行政への申し入れ・提言を定期的に行っている。

昨年には国会に参考人招致されて生活困窮者の現状を伝えた。いま一時的な滞在場所に「ドミトリー(複数人部屋)」が多く、コロナ禍の状況にそぐわないといった問題意識から、もやいは「アパート型」のシェルターを実験的に設けている。他団体とも連携し、今後は政策化を目指していく考えだ。

なおカタリバ、もやいはグッドガバナンス認証を取得しており、認証基準のひとつには「国や企業・市民への提言・情報提供を行っている」こととある。

このように、時として政策にはNPOの長年の現場支援のノウハウを反映したものがあるが、多くの方はそのことに気づかないかもしれない。

社会課題の解決策に著作権はなく、多様な関係者を巻き込んで政策に落とし込まれるために立役者のひとりであるNPOは埋もれがちだ。あなたの生活に関わる話題の法律の改正も、実はNPOのこれまでの努力が結実したものかもしれない。