サステナビリティ領域は環境、人権、ダイバーシティ、働き方改革などと幅広い。企業がサステナ領域での取り組みを進め、具体的な施策を進めるにあたっては、日本の官庁や国内外のNGOなどの「マーク」「認証」「イニシアティブ」を取得するのも一手だ。国内外のサステナ関連「マーク」「認証」などをまとめた。(オルタナS編集長=池田 真隆)
■国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
主催者:国連
概要や入会条件:
国連グローバル・コンパクトは1999年の世界経済フォーラム(ダボス会議)の席上で、コフィ―・アナン国連事務総長(当時)が提唱した国際イニシアティブ。UNGCに署名する企業・団体は、人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、腐敗の防止に関わる4分野、10原則に賛同し、取り組み状況について報告書を年1回提出が求められる。日本支部として、国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンがある。
加盟企業:正会員の企業・組織数は484社(2022年5月10日時点)
リコー、キッコーマン、オムロンなど
■SBT
主催者:SBTイニシアティブ(SBTi)
概要や入会条件:
SBTは、「サイエンス・ベースト・ターゲット(科学に基づいた目標)」の略称。SBTイニシアティブ(SBTi)が運営する国際イニシアティブ。CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)が2015年に立ち上げた。産業革命以前から世界の気温上昇を1.5℃に抑えるために、企業に対し、パリ協定に整合し、科学的知見に基づいた温室効果ガス排出削減目標を設定するように求めている。
加盟企業:1.5度目標の認定を受けた日本企業は147社(2022年3月時点)
ソニー、イオン、味の素など
■CDP
主催者:国際NGO CDP(Carbon Disclosure Project)
概要や入会条件:
英国の国際NGO CDPは、企業や自治体に気候変動など環境分野への取り組みについて質問状を送り、それぞれの団体を8段階で格付けする。質問は「気候変動」「水」「森林」の3つに分けていたが、2023年以降は「生物多様性」「土地利用」「海洋」「食料」などのテーマを加える。ESG投資家などが投資先を選ぶ際の参考情報として活用されている。CDPが開示要請を受託した投資家は、全世界で680機関強に及ぶ。運用資産総額は130兆米ドルを超えている。日本法人は、一般社団法人 CDP Worldwide-Japanが務めている。
Aリスト企業:2021年に最高位のAリスト入りした企業数は世界201社(日本企業は55社)
アサヒグループホールディングス、アスクル、不二製油グループ本社など
■RE100
主催者:国際イニシアティブ「RE100」
概要や入会条件:
「RE(アールイー)100」は、国際環境NGOクライメート・グループがCDPとのパートナーシップのもとに運営する国際的なイニシアティブ。事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す。加盟企業の売上高の合計は4 兆5000億米ドル(2022年2月時点)に及ぶ。再エネへの移行を加速させるために政策提言を出すこともある。
加盟企業:日本企業の加盟社数は65社(2022年2月時点)積水ハウス、丸井グループ、東急など
■Bコープ
主催者:NPO法人B Lab
概要や入会条件:米国のNPO法人B Labが2006年から始めた企業向けの認証制度。ガバナンス、従業員、コミュニティ、環境、カスタマーの5項目から審査する。世界的に厳しい認証制度として知られている。Bコープは「Benefit Corporation」の略称で、すべてのステークホルダーにとっての利益を追求していることを示している。
加盟企業:世界74カ国で3821社(2021年3月時点)日本は6社
主な企業はパタゴニア、ダノン、オールバーズなど。日本企業6社は、ECO Ring、ダノンジャパン、泪橋ラボ、日産通信、フリージア、石井造園、シルクウェーブ
■国際フェアトレード認証ラベル
主催者:国際フェアトレードラベル機構
概要や入会条件:
国際フェアトレードラベル機構が運営する国際的な認証ラベル。国際フェアトレード基準を満たした製品を認証する。社会性、環境性、経済性の3つの側面から評価する。農場から認証製品として出荷されるまで完全に追跡可能で、コーヒーやバナナなど認証原料100%からなる製品に表示する。
■なでしこ銘柄
主催者:経済産業省、東京証券取引所
概要や入会条件:経産省と東京証券取引所が2012年から行う取り組み。上場企業の中から、「女性活躍推進」に優れた企業を選定し、ESG投資を重視する投資家に優良銘柄として紹介する。
選定企業:令和3年度の「なでしこ銘柄」は50社、「準なでしこ銘柄」は15社。なでしこ銘柄は、カルビー、キリン、伊藤忠商事など
■健康経営/ホワイト500
主催者:経済産業省
概要や入会条件:
経産省は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する企業を選定している。2016年には、健康経営優良法人認定制度を設けた。上位500社に入ると「ホワイト500」として認定を受ける。
選定企業:令和4年3月に発表した「健康経営優良法人2022」では「大規模法人部門」に大塚製薬、協和キリン、コニカミノルタなど2299法人が認定を受けた。「中小規模法人部門」に12,255法人が認定を受けた
■くるみんマーク
主催者:厚生労働省
概要や入会条件:
「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が認めた企業に与えられるマーク。子育てしやすい制度や環境が整っていることが証明され、リクルーティングの際に効果を果たす。
選定企業:3548社(2021年5月時点)、PwCコンサルティング、SMBC日興証券、YKKなど
■CASBEE
主催者:国土交通省
概要や入会条件:
国土交通省による建築物の環境性能評価システム。CASBEEは、Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiencyの略称。建築物の設計における環境性や維持コスト、利用者の快適性能などを5段階で評価する。
■障がい者雇用エクセレントカンパニー
主催者:東京都
概要や入会条件:
東京都による障がい者雇用を積極的に行う企業の表彰制度。障害者法定雇用率を達成し、障害者の能力開発や処遇改善を積極的に行う企業を評価し、受賞企業の取り組みをサイトなどで周知する。
受賞企業:令和3年度の受賞企業は、あおぞら銀行、シダックスオフィスパートナー、生活協同組合パルシステム東京、太平ビルサービス東京支店
■ISO14001
主催者:非政府組織 国際標準化機構(ISO、本部スイス・ジュネーブ)
概要や入会条件:
製品の製造過程で環境負荷を最小限にするように定めた国際規格。ISO14001を取得した企業や組織は環境を配慮した組織として認められる。日本では日本適合性認定協会(JAB)が認証機関を統括している。
取得企業:22,004(2019年12月時点)
■エコアクション21
主催者:環境省、一般財団法人持続性推進機構
概要や入会条件:
環境省が策定した環境経営の第三者認証。事業者が継続的に環境経営を改善する手法を取り入れている。中小企業でも取り組みやすいので、「中小企業版ISO」としても知られている。評価基準は、二酸化炭素と廃棄物の排出量、水使用量の把握に加えて、省エネや節水などの取り組みを評価する。
認証企業:認証・登録事業者数は約7,900社(2021年12月時点)、90%が従業員100人以下の中小事業者
■グッドガバナンス認証
主催者:一般財団法人非営利組織評価センター
概要や入会条件:
一般財団法人非営利組織評価センターが行う第三者認証。非営利組織のガバナンスを評価して、信頼性を認証する。企業が協働・支援先のNPOを選ぶ際に参考になる。
■FSC認証
主催者:Forest Stewardship Council(森林管理協議会)(R)
概要:
FSCは10の原則と70の基準を定め、「責任ある森林管理」をされた森林の認証を促進している。FSC認証(R)は環境、社会、経済の便益に適い、きちんと管理された森林からの製品を目に見える形で消費者に届け、それにより経済的利益を生産者に還元する仕組み。認定された独立した第三者認証機関による審査の後、規格を満たしたと判断された場合に発行される。認証取得組織が認証範囲に登録し、認証された管理体制で取り扱っている製品にのみ認証製品としてFSCラベルを付けることが可能だ。
(参照元:NPO法人日本森林管理協議会<FSCジャパン>ウェブサイト)
■MSC認証
主催者:MSC(海洋管理協議会)
概要:
MSC(Marin Stewardship Council:海洋管理協議会)は、水産資源や環境に配慮して獲られた天然の水産物を認証している。「海のエコラベル」として知られる。天然水産資源は、過剰漁獲による枯渇が問題となっており、MSCでは、持続可能な漁業のための要求事項を、MSC漁業認証規格として策定している。認証を取得するためには、3つの原則にある要求事項を満たさなければならない。
・健全な状態にある水産資源のみを漁獲し
・長期にわたって漁獲することができるように水産資源の適切な管理を行い
・ほかの種や広域な生態系への影響を最小限に抑えること
■ASC認証
主催者:ASC(水産養殖管理協議会)
概要:
ASC認証は、環境に大きな負担をかけず、地域社会にも配慮した養殖業を「認証」し、「責任ある養殖水産物」であることを示すラベル。養殖水産業は、養殖場建設による自然環境の破壊、薬物の過剰投与、養殖場から逃げ出した個体が外来生物として生態系に影響を及ぼすなど、社会的な問題になっている。ASCによると、養殖水産物は、現在2億トンを超え、世界の水産物のおよそ半分を占めるという。2021年9月現在、日本でサプライチェーンでの認証を含む「CoC認証」を取得した企業はグループ企業を含め、2287に上り、約250の商品が登録されている。
■RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証
主催者:RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)
概要:
RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)は、WWF(世界自然保護基金)やパーム油生産者および小売業者などを含むパーム油産業に関係する団体が中心となり設立された非営利団体。森林保全や地域住民の暮らし、労働環境などに配慮した「持続可能なパーム油」の生産を認証している。
■RTRS(責任ある大豆の円卓会議)認証
主催者:RTRS(責任ある大豆の円卓会議)
概要:
RTRSは、責任ある大豆の生産、貿易、使用を促進する非営利団体。生産者、供給業者、製造業者、小売業者、金融機関、市民社会組織およびその他の関連するさまざまな利害関係者の間で、大豆の経済的、社会的、環境的影響について合意することを目的として、解決策を議論および開発するためのグローバルなフォーラムとして誕生した。日本では、不二製油グループが2020年5月に加盟した。
■ファッション協定
主催者:ファッション・パクト
概要や入会条件:
2019年8月のG7サミット(仏ビアリッツ)で、欧州を中心とするファッション企業32社で発足。環境負荷の低いビジネスモデルの確立を目指し、気候変動(2050年までにカーボンニュートラル)、生物多様性(持続可能な森林管理など)、海洋保護(プラスチック包装材の廃止など)の3分野で共通の目標を定める。国内企業では2020年12月にアシックスが加盟した。
加盟企業:75社(2022年3月末現在)
アディダス、バーバリー、シャネル、ナイキ、プラダなど
■GOTS
主催者:グローバル・スタンダード
概要や認定条件:
オーガニックの国際認証。原料の70%以上がオーガニックであることに加えて、原料調達から製品化までの全工程において、水やエネルギーに関する環境目標、毒性のある薬剤の不使用、遺伝子組み換え技術の不使用、強制労働・児童労働を行わないことなどをクリアする必要がある。
認定件数:12338件(2021年版レポートより)
認定企業:伊藤忠商事テキスタイルカンパニー、オンワード商事など
■リーピングバニー
主催者: クルエルテルフリー・インターナショナル
概要や認定条件:
日用品や化粧品に対する認証で、原料の調達から製造、流通までの全工程において、動物実験を行なっていない(クルエルティフリー:残虐性がない)ことを示す。米国とカナダの動物保護団体が始めた認証で、欧州(2013年)を皮切りに米カリフォルニア、インド、ニュージーランド、台湾などで動物実験を行なった製品の販売が禁止された。
認定件数:1492(2022年6月現在)
認定企業:ラッシュ、ボディショップなど
■ISCC
主催者:ISCC
概要や入会条件:
欧州連合から始まった、初のバイオマスに関する国際認証。欧州連合域内のISCC EUと、域外のISCC PLUSがある。EUはバイオ燃料が対象で、原料の調達時に森林を破壊していないかに加えてサプライチェーン全体で温室効果ガス排出量の報告が求められる。一方のPLUSは燃料に加えて食品、飼料、化学品など対象が広く、排出量報告は任意となる。
認証企業:5874社(2022年3月現在)
三井化学、長瀬産業など
■LEED
主催者: USGBC
概要や入会条件:
建築物の環境性能に対する国際的な認証。1)ビルの設計・建築、2)インテリアの設計、3)ビルの運用管理、4)エリア開発、5)住宅の5カテゴリーがあり、統合的プロセス、立地と交通、水の利用、エネルギー、材料と資源、室内環境など9項目で評価を行う。評価ポイントの合計によって標準、シルバー、ゴールド、プラチナ4段階の認証レベルが決まる。
認証件数:93612件(2022年3月現在)
認証事例:日本郵船グループ本社、大阪大学箕面キャンパス、東急電鉄南町田グランベリーパーク駅など